三略 / 中略
主不可以無德,無德則臣叛:不可以無威,無威則失權。臣不可以無德,無德則無以事君:不可以無威,無威則國弱,威多則身蹶。
新字:主不可以無徳,無徳則臣叛:不可以無威,無威則失権。臣不可以無徳,無徳則無以事君:不可以無威,無威則国弱,威多則身蹶。
書き下し
主は以て徳無かるべからず、徳無ければ則ち臣叛く。以て威無かるべからず、威無ければ則ち権を失ふ。臣は以て徳無かるべからず、徳無ければ則ち以て君に事ふる無し。以て威無かるべからず、威無ければ則ち国弱し、威多ければ則ち身蹶く。
現代語訳
君主は徳がなくてはならない。徳がなければ臣下は背く。また威厳がなくてはならない。威厳がなければ権力を失う。臣下も徳がなくてはならない。徳がなければ君主に仕えることができない。また威厳がなくてはならない。威厳がなければ国は弱くなる。しかし威厳が過ぎれば、その身は倒れる。
解説
上に立つ者にも、その下で権限を預かる者にも、徳と威の両方が要ると説く段です。徳とは人を惹きつける人格の力、威とは物事を決め秩序を保つ力です。徳だけでは締まりがなく、威だけでは人が離れます。とりわけ注目したいのは末尾で、臣下の側は「威多ければ則ち身蹶く」と釘を刺されている点です。番頭役が力を持ちすぎれば、その力自体が身を滅ぼす原因になる。組織の均衡は、上と下の双方が自らの立ち位置を見誤らないことで保たれます。現代の企業でも、実力ある幹部が現場を掌握しすぎ、社長より存在感を持ってしまうことがあります。本人に野心がなくても、周囲の力学が本人を追い詰める。だから幹部登用の際には、能力だけでなく、力の使い方の節度を見る必要があります。強すぎるナンバーツーは、本人にとっても組織にとっても危うい存在なのです。
この章句が説くこと
徳と威君臣の均衡幹部登用権力の節度
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