三略 / 中略
軍勢曰:無使辯士談說敵美,為其惑眾。勿使仁者主財,為其多施而附于下。
新字:軍勢曰:無使辯士談説敵美,為其惑眾。勿使仁者主財,為其多施而附于下。
書き下し
軍勢に曰く、弁士をして敵の美を談説せしむること無かれ、其の衆を惑はすが為なり。仁者をして財を主らしむること勿かれ、其の多く施して下に附くが為なり。
現代語訳
軍勢に言う。弁の立つ者に敵方の長所をあれこれ語らせてはならない。人々の心を惑わせてしまうからである。情に厚い者に財政を任せてはならない。気前よく施しすぎて、下の者に取り入る結果になるからである。
解説
人を配置するとき、その人の美点がそのまま組織の穴になりうる、という警告です。弁舌の巧みな人が敵の優秀さを説けば、聞く者の戦意はそがれ、迷いが広がります。情の厚い人に財布を握らせれば、目の前の人を助けたい気持ちが勝って原資を配りすぎ、結果として組織の秩序と財政を損ないます。悪意の話ではなく、長所が場所を誤ると害になるという構造の指摘です。現代の組織でも似た場面はあります。共感力の高い人を、線引きの厳しさが要る予算管理や与信の責任者に据えると、断りきれずに例外が積み上がる。分析が鋭い人が、社内で競合の強さばかり語れば、実力はあるのに士気だけが下がる。人の適性は能力だけでなく、その役割が要求する意思決定の質で測るべきです。適材適所とは、強みを活かすと同時に、強みが裏目に出ない場所を選ぶことでもあります。