三略 / 中略
軍勢曰:使智,使勇,使貪,使愚。智者,樂立其功。勇者,好行其志。貪者,邀趨其利。愚者,不顧其死。因其至情而用之,此軍之微權也。
新字:軍勢曰:使智,使勇,使貪,使愚。智者,楽立其功。勇者,好行其志。貪者,邀趨其利。愚者,不顧其死。因其至情而用之,此軍之微権也。
書き下し
軍勢に曰く、智を使ひ、勇を使ひ、貪を使ひ、愚を使ふ。智者は、其の功を立つるを楽しむ。勇者は、其の志を行ふを好む。貪者は、其の利を邀へ趨る。愚者は、其の死を顧みず。其の至情に因りて之を用ふ、此れ軍の微権なり。
現代語訳
軍勢に言う。知恵ある者を使い、勇ある者を使い、欲深い者を使い、愚直な者を使う。知恵ある者は功績を立てることを喜ぶ。勇ある者は自分の志を実行することを好む。欲深い者は利益を求めて走る。愚直な者は死をも顧みない。それぞれの本来の心情に沿って用いる。これが軍における細やかな権謀である。
解説
人を選り好みせず、それぞれの持ち味に沿って働いてもらうという用人論です。知恵者は成果で報われたい、勇者は自分の思いを形にしたい、欲の強い者は利で動く、愚直な者はためらわず突き進む。人はそれぞれ違う動機で動くのだから、その本来の心情に合わせて配置し、任せよということです。ここでの「貪」「愚」は罵倒ではなく、動機の類型を率直に見立てた言葉として置かれています。経営で言えば、全員に同じ動機づけを当てはめようとするのは無理があります。裁量と挑戦の機会に燃える人、称賛や肩書きに反応する人、報酬に素直に反応する人、地道な継続を苦にしない人。同じ制度でも刺さり方は違います。人事評価や配置を考えるとき、その人が何に喜びを感じるかを見極めることが第一歩になります。ただし利で釣るだけの関係は利が尽きれば切れることも、あわせて覚えておくべきです。
この章句が説くこと
用人の術動機づけ適材適所至情
関連する章句
-
『韓非子』八姦第九賢を官にするには其の能を量り、禄を賦するには其の功に稱わす。
-
『韓非子』外儲說左下第三十三霸王たらんと將欲せば、夷吾此に在り。
-
論語・雍也篇季康子問う、「仲由は政に従わしむ可きか。」子曰く、「由や果、政に従うに於いて何か有らん。」曰く、「賜は政に従わしむ可きか。」曰く、「賜や達、政に従うに於いて何か有らん。」曰く、「求は政に従わしむ可きか。」曰く、「求や芸、政に従うに於いて何か有らん。」
-
『韓非子』揚權第八之を行ひて已まざる、是を理を履むと謂ふなり。夫れ物には宜しき所有り、材には施す所有り、各々其の宜しきに處る、故に上に爲す無し。雞をして夜を司らしめ、狸をして鼠を執らしむ。皆其の能を用ふれば、上乃ち事無し。
-
『韓非子』觀行第二十四故に明主は烏獲を窮むるに、其の自ら舉ぐる能わざるを以てせず。離朱を困むるに、其の自ら見る能わざるを以てせず。可勢に因りて、易道を求む。
-
『韓非子』説疑第四十四聖王明君は則ち然らず。内舉するに親を避けず、外舉するに讎を避けず。是焉に在れば従いて之を舉げ、非焉に在れば従いて之を罰す。