三略 / 上略
軍讖曰:善善不進,惡惡不退,賢者隱蔽,不肖在位,國受其害。
新字:軍讖曰:善善不進,悪悪不退,賢者隠蔽,不肖在位,国受其害。
書き下し
軍讖に曰く、善を善として進めず、悪を悪として退けず、賢者は隠蔽し、不肖は位に在り。国は其の害を受く、と。
現代語訳
軍讖にこうある。善い者を善いと認めながら登用せず、悪い者を悪いと知りながら退けない。そのため賢者は身を隠してしまい、無能な者が地位に居座る。国はその害をこうむることになる、と。
解説
知っているのに動かない、という不作為の罪を突いた一段です。善い人物を善いと分かっていながら引き上げない。悪しき者を悪いと知りながら退けない。その結果、賢者は身を隠し、無能な者が地位に居座り続けます。ここで責められているのは、見抜けない愚かさではなく、見抜いていながら決断しない怠慢です。人事の停滞は、そのまま組織の停滞になります。現代の経営でも、これは最も多い過ちの一つでしょう。誰が優秀で誰が問題かを経営陣は把握しているのに、波風を立てたくない、長年の功労がある、他に代わりがいない、といった理由で手を打たない。しかし優秀な人ほど、その不作為をよく見ています。正当に評価されない場所に留まる理由はないと判断すれば、静かに去っていきます。評価とは判断であり、判断は実行して初めて意味を持つ。認識で止まっている人事は、何もしていないのと同じなのです。