三略 / 上略
夫所謂士者,英雄也。故曰羅其英雄,則敵國窮。英雄者,國之幹。庶民者,國之本。得其幹,收其本,則政行而無怨。
新字:夫所謂士者,英雄也。故曰羅其英雄,則敵国窮。英雄者,国之幹。庶民者,国之本。得其幹,収其本,則政行而無怨。
書き下し
夫れ所謂る士とは、英雄なり。故に曰く、其の英雄を羅らば、則ち敵国窮せん、と。英雄は国の幹なり。庶民は国の本なり。其の幹を得て、其の本を収むれば、則ち政行われて怨み無し。
現代語訳
ここでいう士とは、すぐれた人材のことである。だからこう言うのだ。その英雄を網羅して集めれば、敵国は行き詰まる、と。英雄は国の幹であり、庶民は国の根本である。その幹を手に入れ、その根本をしっかり収めれば、政治はうまく行われ、人々の怨みも生じない。
解説
国を一本の樹にたとえた印象的な一段です。すぐれた人材は幹であり、庶民は根である。幹だけあっても根がなければ枯れ、根だけあっても幹がなければ形をなさない。だから両方を得よ、というのです。さらに、英雄を自陣に集めることは、そのまま敵国を弱らせることでもあると説きます。人材の獲得は攻めの一手でもあるという冷徹な認識がここにあります。現代の企業でも、幹と根の両方が要ります。事業を牽引する中核人材だけを厚遇して現場をないがしろにすれば、組織は根腐れします。逆に現場だけを整えて、牽引役を欠けば、方向が定まらず伸びません。そして優秀な人材を採り、育て、引き留めることは、そのまま競合を相対的に弱らせる行為でもあります。人材戦略を採用コストの問題ではなく、競争戦略の核心として捉えること。この段はそう促しています。