三略 / 上略
世能祖祖,鮮能下下,祖祖為親,下下為君。下下者,務耕桑,不奪其時;薄賦斂,不匱其財。罕徭役,不使其勞,則國富而家娛,然後選士以司牧之。
新字:世能祖祖,鮮能下下,祖祖為親,下下為君。下下者,務耕桑,不奪其時;薄賦斂,不匱其財。罕徭役,不使其労,則国富而家娯,然後選士以司牧之。
書き下し
世に能く祖を祖とする者はあれど、能く下を下とする者は鮮し。祖を祖とするは親を為し、下を下とするは君を為す。下を下とする者は、耕桑に務めしめて其の時を奪わず、賦斂を薄くして其の財を匱しめず、徭役を罕にして其の労を使わず。則ち国富みて家娯しむ。然る後に士を選びて以て之を司牧せしむ。
現代語訳
世の中には先祖を先祖として敬える者はいるが、下の者を下の者として大切にできる者は少ない。先祖を敬うのは親としてのつとめであり、下の者を大切にするのは君主としてのつとめである。下の者を大切にする者は、民に農耕や養蚕にいそしませてその時期を奪わず、税を軽くしてその財を乏しくさせず、労役を少なくしてむやみに働かせない。そうすれば国は富み、家々は楽しみを得る。そのうえで有能な士を選び、彼らに民を治めさせるのだ。
解説
先祖を敬える人は多いが、部下や民を大切にできる人は少ない。この対比が鋭い一段です。祖先を祀るのは子としてのつとめにすぎず、下の者を大切にすることこそ上に立つ者のつとめだ、と三略は言い切ります。ではどうするか。農繁期を奪わず、税を軽くし、労役を減らす。つまり民が本業に集中できる時間と余力を、上が奪わないということです。これは現代の組織にそのまま通じます。社員が本来の仕事に打ち込める時間を、会議や報告、形ばかりの手続きが奪っていないか。成果を吸い上げる仕組みばかりが増え、現場に余力が残っていないのではないか。国が富むのは民が豊かになった結果だという順序を、三略は崩しません。まず現場が力を発揮できる環境を整え、そのうえで人を選んで任せる。この順序を逆にした瞬間、組織は痩せていきます。
この章句が説くこと
下を大切にする負担軽減現場優先国富の順序
関連する章句
-
三略・下略豪傑職を秉れば、国威乃ち弱く、殺生豪傑に在れば、国勢乃ち竭く。豪傑首を低るれば、国乃ち久しかるべし。殺生君に在れば、国乃ち安かるべし。四民用ひて虚しければ、国乃ち儲へ無し。四民用ひて足れば、国乃ち安楽なり。
-
三略・下略近きを釈てて近きを謀る者は、労して功無し。遠きを釈てて謀る者は、佚にして終はり有り。佚政には忠臣多く、労政には怨民多し。故に曰く、地を広むるを務むる者は荒れ、徳を広むるを務むる者は強し。能く其の有を有つ者は安く、人の有を貪る者は残なり。残滅の政は、累世患を受く。造作制を過ぐれば、成ると雖も必ず敗る。
-
三略・中略聖人は天に体し、賢人は地に法り、智者は古を師とす。是の故に三略は衰世の為に作る。上略は礼賞を設け、姦雄を別ち、成敗を著す。中略は徳行を差べ、権変を審らかにす。下略は道徳を陳べ、安危を察し、賢を賊ふの咎を明らかにす。故に人主深く上略に暁かなれば、則ち能く賢に任じて敵を擒にす。深く中略に暁かなれば、則ち能く将を御し衆を統ぶ。深く下略に暁かなれば、則ち能く盛衰の源を明らかにし、治国の紀を審らかにす。
-
三略・下略大臣主を疑へば、衆姦集聚す。臣君の尊に当たれば、上下乃ち昏し。君臣の処に当たれば、上下序を失ふ。
-
三略・下略上を犯す者尊く、貪鄙なる者富めば、聖主有りと雖も、其の治を致す能はず。上を犯す者誅せられ、貪鄙なる者拘へらるれば、則ち化行はれて衆悪消ゆ。
-
三略・上略夫れ国を為むるの道は、賢と民とを恃む。賢を信ずること腹心の如く、民を使うこと四肢の如くならば、則ち策に遺ちる無し。適く所は肢体の相い随い、骨節の相い救うが如し。天道自然にして、其の巧みなること間無し。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る