三略 / 上略
軍國之要,察眾心,施百務;危者,安之。懼者,歡之。叛者,還之。冤者,原之:訴者,察之。卑者,貴之。強者,抑之。敵者,殘之。貪者,豐之。欲者,使之。畏者,隱之。謀者,近之。讒者,覆之。毀者,復之。反者,廢之。橫者,挫之。滿者,損之。歸者,招之。服者,活之。降者,脫之。獲固,守之。獲阨,塞之。獲難,屯之。獲城,割之。獲地,裂之。獲財,散之。敵動,伺之。敵近,備之。敵強,下之。敵佚,去之。敵陵,待之。敵暴,緩之。敵悖,義之。敵睦,攜之。順舉挫之。因勢破之。放言過之。四網羅之。得而勿有,居而勿守,拔而勿久,立而勿取。為者則己,有者則士,焉知利之所在。彼為諸侯,己為天子,使城自保,令士自處。
新字:軍国之要,察衆心,施百務;危者,安之。懼者,歓之。叛者,還之。冤者,原之:訴者,察之。卑者,貴之。強者,抑之。敵者,残之。貪者,豊之。欲者,使之。畏者,隠之。謀者,近之。讒者,覆之。毀者,復之。反者,廃之。横者,挫之。満者,損之。帰者,招之。服者,活之。降者,脱之。獲固,守之。獲阨,塞之。獲難,屯之。獲城,割之。獲地,裂之。獲財,散之。敵動,伺之。敵近,備之。敵強,下之。敵佚,去之。敵陵,待之。敵暴,緩之。敵悖,義之。敵睦,攜之。順舉挫之。因勢破之。放言過之。四網羅之。得而勿有,居而勿守,抜而勿久,立而勿取。為者則己,有者則士,焉知利之所在。彼為諸侯,己為天子,使城自保,令士自処。
書き下し
軍国の要は、衆心を察して百務を施すにあり。危うき者は之を安んじ、懼るる者は之を歓ばしめ、叛く者は之を還し、冤なる者は之を原し、訴うる者は之を察し、卑しき者は之を貴くし、強き者は之を抑え、敵する者は之を残い、貪る者は之を豊かにし、欲する者は之を使い、畏るる者は之を隠し、謀ある者は之を近づけ、讒する者は之を覆し、毀る者は之を復し、反く者は之を廃し、横なる者は之を挫き、満つる者は之を損し、帰する者は之を招き、服する者は之を活かし、降る者は之を脱し、固きを獲れば之を守り、阨を獲れば之を塞ぎ、難を獲れば之に屯し、城を獲れば之を割き、地を獲れば之を裂き、財を獲れば之を散ず。敵動かば之を伺い、敵近づかば之に備え、敵強ければ之に下り、敵佚すれば之を去り、敵陵らば之を待ち、敵暴なれば之を緩め、敵悖れば之を義とし、敵睦めば之を携れしむ。順いて挙げて之を挫き、勢に因りて之を破り、言を放ちて之を過らせ、四もに網して之を羅う。得るも有つこと勿かれ、居るも守ること勿かれ、抜くも久しくすること勿かれ、立つるも取ること勿かれ。為す者は則ち己、有つ者は則ち士なれば、焉んぞ利の在る所を知らんや。彼を諸侯と為し、己を天子と為し、城をして自ら保たしめ、士をして自ら処らしむ。
現代語訳
軍と国を治める要は、人々の心を察してさまざまな施策を行うことにある。危うい者は安心させ、恐れる者は喜ばせ、背いた者は帰らせ、無実の罪の者は許し、訴え出る者はその言い分をよく調べ、身分の低い者も引き立て、強すぎる者は抑え、敵対する者は打ち払い、利を貪る者には十分に与え、働きたい者は用い、身の危険を恐れる者は隠して守り、謀のある者は近づけ、讒言する者はその言を退け、人を謗る者にはその名誉を回復させ、離反する者は退け、横暴な者はくじき、驕り満ちた者は減らし、帰順する者は招き入れ、服従する者は生かし、降伏する者は罪を解く。堅固な地を得たら守り、要害を得たら塞ぎ、難所を得たら兵を駐め、城を得たら分け与え、土地を得たら切り分けて与え、財を得たら人々に分け散らす。敵が動けばうかがい、敵が近づけば備え、敵が強ければへりくだり、敵が安逸なら立ち去り、敵が攻めのぼれば待ち受け、敵が乱暴なら手をゆるめて待ち、敵が道に背けば正義を掲げ、敵が結束していれば離間させる。相手の勢いに順って挙兵してくじき、勢いに乗じて破り、噂を流して誤らせ、四方から網を張って捕らえる。得ても私有せず、占領しても居座らず、攻め取っても長居せず、立てても自分のものにしない。事を行うのは自分だが、得たものを与えるのは臣下たちである。ならば利がどこにあるかなど気にする必要はない。相手を諸侯とし、自分は天子となり、城は城の者に自ら守らせ、士は士に自ら身の処し方を決めさせるのだ。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
三略・上略軍讖に曰く、姦雄相い称え、主の明を障蔽す。毀誉並び興り、主の聡を壅塞す。各おの私する所に阿り、主をして忠を失わしむ。故に主、異言を察すれば、乃ち其の萌を観る。主、儒賢を聘すれば、姦雄乃ち遯る。主、旧歯に任ずれば、万事乃ち理まる。主、巌穴を聘すれば、士乃ち実を得。謀は負薪に及べば、功は乃ち述ぶべし。人心を失わざれば、徳は乃ち洋益す、と。
-
三略・上略夫れ主将の法は、務めて英雄の心を攬り、功有る者に賞禄し、志を衆に通ずるにあり。故に衆と好を同じくすれば、成らざるは靡く、衆と悪を同じくすれば、傾かざるは靡し。国を治め家を安んずるは、人を得ればなり。国を亡ぼし家を破るは、人を失えばなり。含気の類、咸な其の志を得んことを願う。
-
三略・上略軍讖に曰く、良将の軍を統ぶるや、己を恕して人を治め、恵を推し恩を施す。士力は日に新たなり。戦うこと風の発するが如く、攻むること河の決するが如し。故に其の衆は望むべくして当たるべからず、下すべくして勝つべからず。身を以て人に先んず。故に其の兵は天下の雄と為る、と。軍讖に曰く、軍は賞を以て表と為し、罰を以て裏と為す。賞罰明らかなれば、則ち将の威行わる。官人を得れば、則ち士卒服す。任ずる所賢なれば、則ち敵国畏る、と。
-
三略・上略夫れ兵を用うるの要は、礼を崇びて禄を重んずるに在り。礼崇ければ則ち智士至り、禄重ければ則ち義士死を軽んず。故に賢に禄するに財を愛まず、功を賞するに時を踰えざれば、則ち下は力を并せて、敵国は削らる。夫れ人を用うるの道は、尊ぶに爵を以てし、贍すに財を以てすれば、則ち士は自ら来たる。接するに礼を以てし、励ますに義を以てすれば、則ち士は之に死す。
-
三略・上略軍讖に曰く、将の謀は密ならんことを欲し、士衆は一ならんことを欲し、敵を攻むるは疾からんことを欲す。将の謀密なれば、則ち姦心閉づ。士衆一なれば、則ち軍心結ぶ。敵を攻むること疾ければ、則ち備え設くるに及ばず。軍に此の三者有れば、則ち計奪われず。将の謀泄るれば、則ち軍に勢無し。外より内を窺えば、則ち禍制せられず。財、営に入れば、則ち衆奸会す。将に此の三者有れば、軍は必ず敗る。将に慮無ければ、則ち謀士去る。将に勇無ければ、則ち士卒恐る。将妄りに動けば、則ち軍重からず。将怒りを遷せば、則ち一軍懼る。
-
三略・中略徳同じく勢敵すれば、以て相ひ傾くる無し。乃ち英雄の心を攬り、衆と好悪を同じくし、然る後に之に加ふるに権変を以てす。故に計策に非ざれば、以て嫌を決し疑を定むる無し。譎奇に非ざれば以て姦を破り寇を息むる無し、陰謀に非ざれば以て功を成す無し。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る