三略 / 上略
軍讖曰:能柔能剛,其國彌光。能弱能強,其國彌彰。純柔純弱,其國必削、純剛純強,其國必亡。
新字:軍讖曰:能柔能剛,其国弥光。能弱能強,其国弥彰。純柔純弱,其国必削、純剛純強,其国必亡。
書き下し
軍讖に曰く、能く柔に能く剛なれば、其の国は弥いよ光り、能く弱に能く強なれば、其の国は弥いよ彰る。純柔純弱なれば、其の国は必ず削られ、純剛純強なれば、其の国は必ず亡ぶ、と。
現代語訳
軍讖にこうある。柔らかくもなれ、硬くもなれる国は、その光がいよいよ輝きを増す。弱くもなれ、強くもなれる国は、その名がいよいよ世に顕れる。しかし柔弱一辺倒であれば、その国は必ず削り取られ、剛強一辺倒であれば、その国は必ず滅びるのだ、と。
解説
前段で示された柔剛強弱の使い分けを、国家の運命という形でさらに明快に言い切った一段です。柔にも剛にもなれる国は栄え、どちらか一方に凝り固まった国は滅ぶ。柔弱一辺倒なら侵食され、剛強一辺倒なら自ら滅びを招く。両極端をともに戒めるところに、三略の現実的なバランス感覚があります。組織運営でもこの二つの失敗は繰り返されます。人当たりのよさばかりを優先して問題に踏み込めない組織は、じわじわと規律が崩れ、競争力を削られていきます。逆に成果と統制だけを振りかざす組織は、短期的に成果を上げても人が疲弊し、ある日ふいに崩壊します。求められるのは、温かさと厳しさ、共感と決断の両方を場面ごとに選び取れる幅の広さです。自分の組織はどちらに偏っているか。この段は、そう問いかける鏡になります。