菜根譚 / 後集
幽人清事縂在自適。故酒以不勸為歡,棋以不淨為勝。笛以無腔為適,琴以無絃為高。會以不期約為真率,客以不迎送為坦夷。若一牽文泥迹,便落塵世苦海矣。
新字:幽人清事縂在自適。故酒以不勧為歓,棋以不浄為勝。笛以無腔為適,琴以無絃為高。会以不期約為真率,客以不迎送為坦夷。若一牽文泥迹,便落塵世苦海矣。
書き下し
幽人の清事は、総て自適に在り。故に酒は勧めざるを以て歓と為し、棋は浄からざるを以て勝と為す。笛は腔無きを以て適と為し、琴は絃無きを以て高しと為す。会は期約せざるを以て真率と為し、客は迎送せざるを以て坦夷と為す。若し一たび文に牽かれ迹に泥(なず)まば、便ち塵世の苦海に落ちん。
現代語訳
隠者の清らかな事は、すべて自ら適うことにある。だから酒は勧めないことを歓びとし、碁は勝ち負けを争わないことを勝ちとする。笛は節がないことを適とし、琴は絃がないことを高しとする。集まりは約束しないことを率直とし、客は迎え送らないことを平らかとする。もしひとたび形式に引かれ、跡形にとらわれれば、たちまち俗世の苦海に落ちる。
解説
勧めない酒、争わない碁、絃のない琴、約束しない集まり。すべて、形式を外しています。「形式に引かれ、跡形にとらわれれば、俗世の苦海に落ちる」。作法が整うほど、自在さは失われるのです。