菜根譚 / 後集
文以拙進,道以拙成。一拙字有無限意味。如桃源犬吠,桑間鷄鳴,何等淳龐。至於寒潭之月,古木之鴉,工巧中便覺有衰颯氣象矣。
新字:文以拙進,道以拙成。一拙字有無限意味。如桃源犬吠,桑間鶏鳴,何等淳龐。至於寒潭之月,古木之鴉,工巧中便覚有衰颯気象矣。
書き下し
文は拙を以て進み、道は拙を以て成る。一の拙の字に無限の意味有り。桃源の犬吠、桑間の鶏鳴の如きは、何等の淳龐(じゅんぽう)ぞ。寒潭の月、古木の鴉に至りては、工巧の中に便ち衰颯の気象有るを覚ゆ。
現代語訳
文は拙さによって進み、道は拙さによって成る。この「拙」の一字に、限りない意味がある。桃源郷の犬の吠え声、桑畑の鶏の鳴き声のようなものは、なんと素朴で厚いことか。冷たい淵の月、古木の鴉に至っては、巧みさの中に、すでに衰えの気配があるのを感じる。
解説
物事は、完璧を求めすぎると、かえって本質を見失うことがあります。例えば、洗練された表現や技巧を凝らした作品よりも、素朴で飾り気のない言葉の方が、人の心に深く響く場合があるでしょう。それは、技巧が極まると、そこから衰えや作為の気配が漂い始めるからです。何かに取り組む際、完璧を目指すあまり手が止まってしまうなら、まずは「拙さ」を恐れず、ありのままの姿で進めてみることが大切です。その素朴さの中にこそ、無限の可能性が宿っているのかもしれません。
この章句が説くこと
文以拙進道以拙成工巧中便覚有衰颯気象矣