菜根譚 / 後集
人情聽鷽啼則喜,聞蛙鳴則厭。見花則思培之,遇草則欲去之。倶是以形氣用事。若以性天視之,何者非自鳴其天機,非自暢其生意也。
新字:人情聴鷽啼則喜,聞蛙鳴則厭。見花則思培之,遇草則欲去之。倶是以形気用事。若以性天視之,何者非自鳴其天機,非自暢其生意也。
書き下し
人情は鶯の啼くを聴けば則ち喜び、蛙の鳴くを聞けば則ち厭う。花を見れば則ち之を培わんことを思い、草に遇えば則ち之を去らんと欲す。倶に是れ形気を以て事を用う。若し性天を以て之を視れば、何者か自ら其の天機を鳴らすに非ざらん、自ら其の生意を暢(の)ぶるに非ざらん。
現代語訳
人の情は、鶯の鳴くのを聴けば喜び、蛙の鳴くのを聞けば嫌う。花を見れば育てようと思い、草に出会えば除こうとする。みな形や気配で事を判断している。もし本来の天から見れば、どれが自ら天の働きを鳴らしていないだろうか。どれが自ら生きる意志を伸ばしていないだろうか。
解説
私たちは、鶯の鳴き声は好み、蛙の鳴き声は嫌うなど、自分の感情や都合で物事を判断しがちです。しかし、自然界のすべての存在は、それぞれの場所で、それぞれの命を精一杯生き、その働きを全うしています。自分の好悪の感情を手放し、あらゆるものを本来の姿として受け入れる視点を持つことで、普段は見過ごしている多様な価値や美しさに気づき、より豊かな世界を感じられるようになるでしょう。
この章句が説くこと
人情聴鶯啼則喜聞蛙鳴則厭若以性天視之何者非自鳴其天機
関連する章句
-
菜根譚・後集鶯花茂りて山濃く谷艶なるは、総て是れ乾坤の幻境なり。水木落ちて石痩せ崖枯るるは、纔(はじ)めて天地の真吾を見る。
-
菜根譚・後集鳥語虫声は、総て是れ心を伝うるの訣なり。花英草色は、道を見るの文に非ざる無し。学者は、天機清徹、胸次玲瓏にして、物に触れて皆な会心の処有るを要す。
-
菜根譚・後集万籟寂寥の中、忽ち一鳥の弄声を聞かば、便ち許多の幽趣を喚び起こす。万卉摧剝の後、忽ち一枝の擢秀を見ば、便ち無限の生機を触動す。見るべし、性天は未だ嘗て枯槁せず、機神は最も触発するに宜し。
-
菜根譚・後集花は盆内に居らば、終に生機に乏し。鳥は籠中に入らば、便ち天趣を減ず。山間の花鳥の、錯雑して文を成し、翺翔自若にして、自ら是れ悠然として会心なるに若かず。
-
菜根譚・前集春至りて時和し、花は尚お一段の好色を舖き、鳥は且つ幾句の好音を囀る。士君子、幸いに清時に値(あ)い、復た温飽に遇う。好言を立て、好事を行うを思わずんば、是れ世に在ること百年なりと雖も、恰も未だ一日も生まれざるに似たり。
-
菜根譚・後集花を栽え竹を種え、鶴を玩び魚を観るも、亦た段の自得の処有るを要す。若し徒らに光景に留連し、物華を玩弄せば、亦た吾が儒の口耳、釈氏の頑空のみ。何の佳趣か有らん。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る