菜根譚 / 前集
害人之心不可有,防人之心不可無,此戒疏於慮也;寧受人之欺,毋逆人之詐,此儆傷於察也;二語並存,精明而渾厚矣。
書き下し
人を害するの心は有るべからず。人を防ぐの心は無かるべからず。此れ慮に疏なるを戒むるなり。寧ろ人の欺くを受くるも、人の詐を逆(むか)うる毋かれ。此れ察に傷るるを儆(いまし)むるなり。二語並び存せば、精明にして渾厚なり。
現代語訳
人を害する心があってはならない。人を防ぐ心がなくてはならない。これは、慮りが疎かになることを戒めている。むしろ人に欺かれても、人の詐りを先回りして疑ってはならない。これは、詮索に傷つくことを戒めている。二つの言葉が並び立てば、明晰でありながら厚みがある。
解説
人を傷つける心は決して持ってはいけませんが、自分を守るための警戒心は必要です。これは、思慮が足りないことへの戒めです。一方で、たとえ人に欺かれても、先回りして相手を疑いすぎるのは避けるべきです。これは、詮索しすぎて人間関係を損なうことへの警告です。この二つの教えを両立させることで、私たちは物事をはっきりと見極める明晰さを持ちながら、同時に人を受け入れる温かさや包容力も兼ね備えることができます。疑心暗鬼にならず、しかし無防備でもない、賢明な心の持ちようが大切です。
この章句が説くこと
害人之心不可有防人之心不可無寧受人之欺毋逆人之詐
関連する章句
-
菜根譚・前集偏信して奸の欺く所と為る毋かれ。自任して気の使う所と為る毋かれ。己の長を以て人の短を形(あら)わす毋かれ。己の拙に因りて人の能を忌む毋かれ。
-
菜根譚・前集人を信ずる者は、人未だ必ずしも尽くは誠ならざるも、己は則ち独り誠なり。人を疑う者は、人未だ必ずしも皆な詐ならざるも、己は則ち先ず詐なり。
-
菜根譚・前集善人は未だ急には親しむ能わず。預め揚ぐるに宜しからず。讒譖の奸を来たすを恐る。悪人は未だ軽くは去る能わず。先ず発するに宜しからず。媒孽(ばいげつ)の禍に遭うを恐る。
-
菜根譚・前集群疑に因りて独見を阻む毋かれ。己が意に任せて人言を廃する毋かれ。小恵に私して大体を傷る毋かれ。公論を借りて以て私情を快くする毋かれ。
-
菜根譚・前集人を責むる者は、過ち有るの中に過ち無きを原(たず)ねば、則ち情平らかなり。己を責むる者は、過ち無きの内に過ち有るを求めば、則ち徳進む。
-
菜根譚・前集悪を聞くも就ち悪む可からず。讒夫の怒を洩らす為ならんことを恐る。善を聞くも急に親しむべからず。奸人の身を進むるを引かんことを恐る。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る