呂氏春秋 / 辯圡②
所謂今之耕也,營而無獲者:其蚤者先時,晚者不及時,寒暑不節,稼乃多菑,實。其為畝也,高而危則澤奪,陂則埒,見風則𠎮,高培則拔,寒則雕,熱則脩,一時而五六死,故不能為來。不俱生而俱死,虛稼先死,眾盜乃竊。望之似有餘,就之則虛。農夫知其田之易也,不知其稼之疏而不適也;知其田之際也,不知其稼居地之虛也;不除則蕪,除之則虛,此事之傷也。故畮欲廣以平,甽欲小以清;下得陰,上得陽,然後咸生。
新字:所謂今之耕也,営而無獲者:其蚤者先時,晩者不及時,寒暑不節,稼乃多菑,実。其為畝也,高而危則沢奪,陂則埒,見風則𠎮,高培則抜,寒則雕,熱則脩,一時而五六死,故不能為来。不倶生而倶死,虚稼先死,眾盗乃竊。望之似有余,就之則虚。農夫知其田之易也,不知其稼之疏而不適也;知其田之際也,不知其稼居地之虚也;不除則蕪,除之則虚,此事之傷也。故畮欲広以平,甽欲小以清;下得陰,上得陽,然後咸生。
書き下し
所謂今の耕するや、營めども獲る無きは、其の蚤き者の時に先だち、晩き者の時に及ばず、寒暑の節ならずして、稼乃ち菑實多きなり。其の畝を為るや、高くして危ければ則ち澤奪われ、陂すれば則ち埒し、風せらるれば則ち仆れ、高く培えば則ち拔け、寒ければ則ち雕み、熱ければ則ち脩み、一時にして五六死す。故に來を為す能わず。俱に生ぜずして俱に死るるに、虚稼先づ死るるは、衆盜乃ち竊めばなり。之を望めば餘り有るに似るも、之に就けば則ち虚し。農夫、其の田の易まるを知るも、其の稼の疏にして適せざるを知らざることあり。其の田の除するを知るも、其の稼の地に居るの虚しきを知らざることあり。除せざれば則ち蕪れ、之を除すれば則ち虚しきは、此れ事の傷るるなり。故に畮は廣くして以て平かなるを欲し、甽は小にして以て深きを欲し、下は陰を得、上は陽を得、然る後咸生ず。
現代語訳
いわゆる今どきの耕作で、骨折っても収穫がないのは、早まきは時期に先立ち、遅まきは時期に間に合わず、寒暖の調節も乱れて、作物に災いによる実の入りの悪さ(菑実)が多いからである。畝の作り方も、高くして不安定なら水気(潤い)が奪われ、傾斜すれば土手が崩れ、風にあおられれば倒れ、高く盛りすぎれば根が抜け、寒ければしぼみ、暑ければ縮んで、一つの季節のうちに五つも六つも枯れ死ぬ。だから豊かな実り(來)を成せない。いっせいに芽生えず、いっせいに枯れるなかで、弱い作物(虚稼)が先に枯れるのは、多くの盗人(衆盗)が実りを奪うからである。遠目には作物が余るほどに見えても、近づけばすかすかである。農夫は自分の田がよく耕されていることは知っていても、作物がまばらで土地に適していないことには気づかない。田の除草はしても、作物が除草で根を傷めて土に浮いてすかすかになることには気づかない。除草しなければ荒れ、除草すれば実がすかすかになる、これが農事の失敗である。だから畝は広く平らであってほしく、溝は小さく深くあってほしい。下は水気(陰)を得、上は日ざし(陽)を得て、そうしてはじめて作物はみな生育するのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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呂氏春秋・辯圡④凡そ禾の患いは、俱に生ぜずして俱に死するなり。是を以て先づ生ずる者は美米、後に生ずる者は粃と為る。是の故に其の耨ずるや、其の兄を長ぜしめて其の弟を去る。肥に樹うるには、扶疏ならしむること無く、墝に樹うるには、專生して族居せしむるを欲せず。肥にして扶疏なれば則ち粃多く、墝にして專居すれば則ち多く死る。稼を知らざる者は、其の耨するや、其の兄を去りて其の弟を養い、其の粟を収めずして其の粃を収む。上下安からざれば、則ち禾多く死る。土を厚くすれば則ち孽通ぜず、土を薄くすれば則ち蕃轓にして發せず。壚埴冥色にして、剛土に柔種し、免め耕し匿を殺れば、農事をして得しむ。
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呂氏春秋・辯圡①凡そ耕の道、必ず壚に始まるは、其の澤にして後枯るること寡きが為なり。必ず其のドウを厚くす。其れ唯だ厚くして及ぶが為なり。飽く者は之を荏らかくし、堅き者は之を耕し、其のドウを澤して之を後にす。上田は則ち其の處を被い、下田は則ち其の汙を盡くす。三盜に與えて地を任ぜしむること無かれ。夫れ四序參發するに、甽を大にし畝を小にし、青魚の胠らるるがごとく為し、苗、直鬛の若きは、地之を竊むなり。既に種えて行無く、耕せども長ぜざるは、則ち苗相竊むなり。除せざれば則ち蕪れ、之を除せば則ち虚しきは、則ち草之を竊むなり。故に此の三盜なる者を去りて、而る後粟多くす可きなり。
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呂氏春秋・辯圡③稼は塵より生じ、而して堅きに殖せんことを欲する者なり。其の種を愼んで、數ならしむること勿く、亦た疏ならしむること勿れ。其の土を施すに於いて、足らざらしむること無く、亦た餘り有らしむること無かれ。熟して有た耰するや、必ず其の培いに務む。其の耰するや稹かならんとす。稹かなる者は、其の生ずるや必ず先だてばなり。其の土を施すや均しからんとす。均しき者は、其の生ずるや必ず堅ければなり。是を以て畮は廣くして以て平らかなれば、則ち本を喪わず。莖、地に生ずる者は、之を五分するに地を以てす。莖の生ずるや行有り。故に遫く長ず。弱相害せず。故に遫く大なり。衡行必ず得、縱行必ず術げ、其の行を正して、其の風を通じ、必ず中央に夬して、帥いて泠風を為す。苗、其の弱きや孤ならんことを欲し、其の長ずるや相與に居らんことを欲し、其の熟するや相扶けんことを欲す。是の故に三以て族と為せば、乃ち粟多し。
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呂氏春秋・任地③上田は畝を棄て、下田は甽を棄つ。五耕五耨、必ず審らかにして以て其の深殖の度を盡くせば、陰土必ず得、大草生ぜず、又螟蜮無し。今茲は美禾あり、來茲は美麥あり。是を以て六尺の耜は、畝を成す所以なり。其の博さ八寸は、甽を成す所以なり。耨の柄は尺、此れ其の度なり。其の耨六寸は、稼を閒つる所以なり。地肥えしむ可く、又棘せしむ可し。人肥やすに必ず澤を以てすれば、苗をして堅に地をして隙あらしむ。人耨るに必ず旱を以てすれば、地をして肥えしめ土をして緩ならしむ。
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呂氏春秋・任地⑤年有れば土を瘞り、年無きも土を瘞る。民時を失うこと無ければ、之をして下を治めしむること無し。貧富の利器を知れば、皆時至りて作し、時を渴して止む。是を以て老弱の力盡く起こす可し。其の日を用うること半ばにして、其の功倍せしむ可し。事を知らざる者は、時未だ至らずして之に逆らい、時既に往きて之を慕う。時に當たりて之を薄んじ、其の民をして之に郤らわしめ、民既に郤らえば、乃ち良時を以て慕う。此れ事に從うの下なり。事を操れば則ち苦しみ、高下を知らざれば、民は乃ち逾處す。稑禾を種うれども稑と為らず、重禾を種うれども重と為らず。是を以て粟少くして功を失う。
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呂氏春秋・任地②凡そ耕の大方は、力ある者は柔ならんと欲し、柔なる者は力あらんと欲す。息する者は勞せんと欲し、勞する者は息せんと欲す。棘せたる者は肥えんと欲し、肥えたる者は棘せんと欲す。急なる者は緩ならんと欲し、緩なる者は急ならんと欲す。溼なる者は燥ならんと欲し、燥なる者は溼ならんと欲す。