呂氏春秋 / 辯圡①
凡耕之道:必始於壚,為其寡澤而後枯;必厚其靹,為其唯厚而及;𩛊者𦷺之,堅者耕之,澤其䪏而後之;上田則被其處,下田則盡其汙。無與三盜任地:夫四序參發,大甽小畝,為青魚胠,苗若直獵,地竊之也;既種而無行,耕而不長,則苗相竊也;弗除則蕪,除之則虛,則草竊之也。故去此三盜者,而後粟可多也。
新字:凡耕之道:必始於壚,為其寡沢而後枯;必厚其靹,為其唯厚而及;𩛊者𦷺之,堅者耕之,沢其䪏而後之;上田則被其処,下田則尽其汙。無与三盗任地:夫四序参発,大甽小畝,為青魚胠,苗若直猟,地竊之也;既種而無行,耕而不長,則苗相竊也;弗除則蕪,除之則虚,則草竊之也。故去此三盗者,而後粟可多也。
書き下し
凡そ耕の道、必ず壚に始まるは、其の澤にして後枯るること寡きが為なり。必ず其のドウを厚くす。其れ唯だ厚くして及ぶが為なり。飽く者は之を荏らかくし、堅き者は之を耕し、其のドウを澤して之を後にす。上田は則ち其の處を被い、下田は則ち其の汙を盡くす。三盜に與えて地を任ぜしむること無かれ。夫れ四序參發するに、甽を大にし畝を小にし、青魚の胠らるるがごとく為し、苗、直鬛の若きは、地之を竊むなり。既に種えて行無く、耕せども長ぜざるは、則ち苗相竊むなり。除せざれば則ち蕪れ、之を除せば則ち虚しきは、則ち草之を竊むなり。故に此の三盜なる者を去りて、而る後粟多くす可きなり。
現代語訳
およそ耕作の道は、まず黒くかたい土(壚)から手をつける。それは潤いがあって後で枯れにくいからである。次に軟らかい土を厚く盛る。厚くしてこそ水気が行きわたるからである。柔らかすぎる土はさらにやわらげ、かたい土は耕し起こし、軟らかい土は潤してから後回しにする。高地の田では保湿のためその表面を覆い、低地の田では排水のため汚水や汚物を取り除く。作物を損なう三つの盗人(三盗)に田を任せてはならない。四季の農作業を盛んに行うのに、溝を大きく畝を小さくし、まるで青魚の腹を開いたように畝が細く溝が広くなって、苗がまっすぐ伸びたたてがみのようにばらつくのは、土の作り方が実りを盗んでいる(地盗)からである。種をまいても列(条播)にならず、耕しても伸びないのは、苗どうしが養分を奪い合っている(苗盗)からである。除草しなければ荒れ、除草すれば根が傷んで実がすかすかになるのは、雑草が実りを盗んでいる(草盗)からである。だからこの三つの盗人を取り除いてこそ、粟を多く収穫できるのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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呂氏春秋・辯圡②所謂今の耕するや、營めども獲る無きは、其の蚤き者の時に先だち、晩き者の時に及ばず、寒暑の節ならずして、稼乃ち菑實多きなり。其の畝を為るや、高くして危ければ則ち澤奪われ、陂すれば則ち埒し、風せらるれば則ち仆れ、高く培えば則ち拔け、寒ければ則ち雕み、熱ければ則ち脩み、一時にして五六死す。故に來を為す能わず。俱に生ぜずして俱に死るるに、虚稼先づ死るるは、衆盜乃ち竊めばなり。之を望めば餘り有るに似るも、之に就けば則ち虚し。農夫、其の田の易まるを知るも、其の稼の疏にして適せざるを知らざることあり。其の田の除するを知るも、其の稼の地に居るの虚しきを知らざることあり。除せざれば則ち蕪れ、之を除すれば則ち虚しきは、此れ事の傷るるなり。故に畮は廣くして以て平かなるを欲し、甽は小にして以て深きを欲し、下は陰を得、上は陽を得、然る後咸生ず。
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呂氏春秋・辯圡③稼は塵より生じ、而して堅きに殖せんことを欲する者なり。其の種を愼んで、數ならしむること勿く、亦た疏ならしむること勿れ。其の土を施すに於いて、足らざらしむること無く、亦た餘り有らしむること無かれ。熟して有た耰するや、必ず其の培いに務む。其の耰するや稹かならんとす。稹かなる者は、其の生ずるや必ず先だてばなり。其の土を施すや均しからんとす。均しき者は、其の生ずるや必ず堅ければなり。是を以て畮は廣くして以て平らかなれば、則ち本を喪わず。莖、地に生ずる者は、之を五分するに地を以てす。莖の生ずるや行有り。故に遫く長ず。弱相害せず。故に遫く大なり。衡行必ず得、縱行必ず術げ、其の行を正して、其の風を通じ、必ず中央に夬して、帥いて泠風を為す。苗、其の弱きや孤ならんことを欲し、其の長ずるや相與に居らんことを欲し、其の熟するや相扶けんことを欲す。是の故に三以て族と為せば、乃ち粟多し。
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呂氏春秋・辯圡④凡そ禾の患いは、俱に生ぜずして俱に死するなり。是を以て先づ生ずる者は美米、後に生ずる者は粃と為る。是の故に其の耨ずるや、其の兄を長ぜしめて其の弟を去る。肥に樹うるには、扶疏ならしむること無く、墝に樹うるには、專生して族居せしむるを欲せず。肥にして扶疏なれば則ち粃多く、墝にして專居すれば則ち多く死る。稼を知らざる者は、其の耨するや、其の兄を去りて其の弟を養い、其の粟を収めずして其の粃を収む。上下安からざれば、則ち禾多く死る。土を厚くすれば則ち孽通ぜず、土を薄くすれば則ち蕃轓にして發せず。壚埴冥色にして、剛土に柔種し、免め耕し匿を殺れば、農事をして得しむ。
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呂氏春秋・審時①凡そ農の道は、時に厚きを寶と為す。木を斬ること時ならざれば、折れずんば必ず穗く。稼就って穫らざれば、必ず天の菑いに遇う。夫れ稼は之を為す者は人なり、之を生ずる者は地なり、之を養う者は天なり。是を以て人之を稼するに足を容れ、之を耨るに耨を容れ、之を據うに手を容る。此を之れ耕道と謂う。
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呂氏春秋・任地③上田は畝を棄て、下田は甽を棄つ。五耕五耨、必ず審らかにして以て其の深殖の度を盡くせば、陰土必ず得、大草生ぜず、又螟蜮無し。今茲は美禾あり、來茲は美麥あり。是を以て六尺の耜は、畝を成す所以なり。其の博さ八寸は、甽を成す所以なり。耨の柄は尺、此れ其の度なり。其の耨六寸は、稼を閒つる所以なり。地肥えしむ可く、又棘せしむ可し。人肥やすに必ず澤を以てすれば、苗をして堅に地をして隙あらしむ。人耨るに必ず旱を以てすれば、地をして肥えしめ土をして緩ならしむ。
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呂氏春秋・任地②凡そ耕の大方は、力ある者は柔ならんと欲し、柔なる者は力あらんと欲す。息する者は勞せんと欲し、勞する者は息せんと欲す。棘せたる者は肥えんと欲し、肥えたる者は棘せんと欲す。急なる者は緩ならんと欲し、緩なる者は急ならんと欲す。溼なる者は燥ならんと欲し、燥なる者は溼ならんと欲す。