呂氏春秋 / 上農⑤
野禁有五:地未辟易,不操麻,不出糞。齒年未長,不敢為園囿。量力不足,不敢渠地而耕。農不敢行賈,不敢為異事。為害於時也。
書き下し
然る後、野禁を制す。野禁に五有り。地未だ辟易せざれば、麻を操らず、糞を出ださず。齒年未だ長ぜざれば、敢て園囿を為さず。力を量りて足らざれば、敢て地を渠して耕さず。農は敢て行賈せず、敢て異事を為さず。害を時に為せばなり。
現代語訳
そのうえで野の禁令(野禁)を定める。野禁には五つある。第一に、土地がまだ凍土が解けて耕せる状態にならないうちは、土を守るために被せた藁に手をつけず、塵芥を取り除かない。第二に、年齢がまだ十分でない(若すぎる)者には園や苑の仕事をさせない。第三に、力量を量って足りない者には、新たに水路を掘って土地を開墾させない。第四・第五に、農民はみだりに商売をせず、農業以外の余計な仕事をしない。いずれも農時を妨げるからである。
解説
ここでは野禁と呼ばれる、農作業に関する五つの禁令が列挙されます。土がまだ耕せる状態でないうちは無理に手を入れない、若すぎる者や力不足の者に重い開墾をさせない、農民が商売や余計な仕事に手を出さない、といった具体的な戒めです。いずれも農時と農力を無駄にせず、田畑の営みに集中させるための決まりで、農本思想における耕作の要諦を制度化したものといえます。適期でない作業を戒め、人と土地の力を適切に配分するこの考え方は、無理な前倒しや過剰な負荷を避けるという点で、農業に限らず現代の作業計画や資源配分にも通じる知恵です。
この章句が説くこと
野禁辟易園囿開墾農時農本思想
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