呂氏春秋 / 上農④
故當時之務,不興土功,不作師徒,庶人不冠弁、娶妻、嫁女、享祀,不酒醴聚眾,農不上聞,不敢私籍於庸,為害於時也。然後制野禁,苟非同姓,農不出御,女不外嫁,以安農也。
新字:故当時之務,不興土功,不作師徒,庶人不冠弁、娶妻、嫁女、享祀,不酒醴聚眾,農不上聞,不敢私籍於庸,為害於時也。然後制野禁,苟非同姓,農不出御,女不外嫁,以安農也。
書き下し
故に時の務めに當りてや、土功を興さず、師徒を作さず、庶人は冠弁・娶妻・嫁女・享祀せず、酒醴もて衆を聚めず、農は上聞せざれば、敢て私に庸に籍やしめず。害を時に為せばなり。苟しくも同姓に非ざれば、男は出でて御らず、女は外に嫁がず、以て農を安んずるなり。
現代語訳
だから農繁期に当たっては、土木工事を起こさず、軍隊を動員せず、庶民は元服・妻めとり・娘の嫁入り・祭祀を行わず、酒宴で人を集めることもしない。農民は農閑の功績で天子に取り立てられることもないので、勝手に人を雇って自分の田以外を耕させることもさせない。いずれも農時を妨げるからである。かりにも同姓(同族)でなければ、男はよそへ出て妻をめとらず、女はよそへ嫁がない。こうして農の営みを安定させるのである。
解説
農繁期には農作業を妨げる一切の行事や労役を控えるべきだ、という農時尊重の具体策が並びます。土木工事や軍事動員はもちろん、元服・婚礼・祭祀・酒宴といった私的な行事まで慎み、時節を奪わないよう配慮せよと説きます。さらに婚姻による人の移動さえ抑えて農民を土地に落ち着かせ、農業を安定させようとします。これは農本思想の中核にある、時を敬い日を愛すという耕作の要諦を制度面から支えるもので、農時を国家運営の最優先事項と見る発想です。適切なタイミングを逃さないことが成果を左右するという考え方は、段取りや時間管理を重んじる現代の仕事にも通じます。
この章句が説くこと
農時土功師徒野禁農本思想時を敬う