呂氏春秋 / 分職②
武王之佐五人。武王之於五人者之事無能也,然而世皆曰:「取天下者武王也。」故武王取非其有,如己有之,通乎君道也。通乎君道,則能令智者謀矣,能令勇者怒矣,能令辯者語矣。夫馬者,伯樂相之,造父御之,賢主乘之,一日千里,無御相之勞而有其功,則知所乘矣。
新字:武王之佐五人。武王之於五人者之事無能也,然而世皆曰:「取天下者武王也。」故武王取非其有,如己有之,通乎君道也。通乎君道,則能令智者謀矣,能令勇者怒矣,能令辯者語矣。夫馬者,伯楽相之,造父御之,賢主乗之,一日千里,無御相之労而有其功,則知所乗矣。
書き下し
武王の佐は五人、武王の五人者の事に於けるや、無能なり。然れども世は皆曰く、「天下を取る者は武王なり。」故に武王の其の有に非ざるを取ること、己の之を有するが如きは、君道に通ずればなり。君道に通ずれば、則ち能く智者をして謀らしめ、能く勇者をして怒らしめ、能く辯者をして語らしむ。夫れ馬は、伯樂之を相し、造父之を御し、賢主之に乘り、一日千里す。御相の勞無くして其の功有るは、則ち乘る所を知るなり。
現代語訳
武王の補佐は五人いた。武王自身は五人の仕事については無能であった。それでも世の人は皆「天下を取ったのは武王だ」と言う。だから武王が自分の物でないものを自分の物のように取ったのは、君主の道に通じていたからだ。君主の道に通じれば、知者に謀らせ、勇者に奮い立たせ、弁者に語らせることができる。そもそも馬は、伯楽が鑑定し、造父が御し、賢明な主人が乗れば、一日に千里を走る。御したり鑑定したりの労なく成果を得るのは、乗るべきものを知っているからだ。
解説
この段は、周の武王を例に、リーダーの本領は自ら働くことでなく人を活かすことだと説きます。武王は補佐五人の実務では無能でしたが、天下を取った功は武王のものとされます。伯楽が鑑定し造父が御した名馬に賢主がただ乗って千里を得るように、君主は知者・勇者・弁者を適所に配して労せず成果を挙げる、というのです。背景には、前段の君道論を具体化する意図があります。核心は、実務能力より人材を見抜き使いこなす統率力を君主の徳とする点です。現代の経営でも、優れた経営者は必ずしも各分野の専門家ではなく、適材を配し力を引き出す人がなお成果を上げます。委任と登用の妙を教える一段です。
この章句が説くこと
武王伯楽造父名馬登用人を活かす