呂氏春秋 / 自知③
荊成、齊莊不自知而殺,吳王、智伯不自知而亡,宋、中山不自知而滅,晉惠公、趙括不自知而虜,鑽荼、龐涓、太子申不自知而死,敗莫大於不自知。
新字:荊成、斉荘不自知而殺,吳王、智伯不自知而亡,宋、中山不自知而滅,晉恵公、趙括不自知而虜,鑽荼、龐涓、太子申不自知而死,敗莫大於不自知。
書き下し
荊成・齊莊は自ら知らずして殺され、呉王・智伯は自ら知らずして亡び、宋・中山は自ら知らずして滅び、晉の惠公・趙括は自ら知らずして虜となり、鑽荼・龐涓・太子申は自ら知らずして死せり。敗は自ら知らざるよりも大なるものは莫し。
現代語訳
楚の成王と斉の荘公は自らを知らずに殺され、呉王(夫差)と智伯は自らを知らずに滅び、宋と中山は自らを知らずに国を滅ぼし、晋の恵公と趙括は自らを知らずに捕虜となり、鑽荼・龐涓・太子申は自らを知らずに死んだ。敗北で、自らを知らないことより大きな原因はない。
解説
この段は、楚の成王や斉の荘公、呉王夫差、智伯、趙括ら、歴史上敗亡した君主や将軍を列挙し、その破滅の根本原因を「自らを知らなかったこと」に帰します。多くの実例を畳みかけ、敗北の最大の要因は自己認識の欠如だと断言します。背景には、能力や勢力の過信が身の破滅を招いた春秋戦国の教訓があります。現代でも、自分や自組織の実力・限界を見誤ることは、戦略の失敗や致命的判断に直結します。華々しい失敗例の多くが慢心と自己過信に根ざすことを踏まえ、冷静な自己評価こそ最大の防御だと教えてくれます。
この章句が説くこと
自知敗亡智伯趙括呉王夫差自己過信
関連する章句
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呂氏春秋・知化①夫れ勇を以て人に事うる者は、死を以てするなり。未だ死せずして死を言うとも、論らず。以に之を知ると雖も知ること勿きと同じなり。凡そ智の貴きは、化を知るを貴ぶなり。人主の惑う者は則ち然らず。化未だ至らざれば則ち知らず。化已に至れば、之を知ると雖も、知ること勿きと一貫なり。事、以て過つ可き者有り、以て過つ可からざる者有り。而して身死して國亡ぶるは、則ち胡ぞ以て過つ可けん。此れ賢主の重んずる所にして、惑主の輕んずる所なり。輕んずる所、國惡くんぞ危うからざるを得ん。身惡くんぞ困しまざるを得ん。危困の道、身死し國亡ぶるは、化を先知せざるに在るなり。呉王夫差は是れなり。子胥は化を先知せざるに非ざるなり。諫むれども聽かれず。故に呉は丘墟と為り、禍い闔廬に及べり。
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呂氏春秋・審己④齊の湣王、亡げて衛に居る。晝日歩足し、公玉丹に謂いて曰く、「我已に亡せり、而れども其の故を知らず。吾が亡せる所以は、果して何の故ぞや。我當に已むべし。」公玉丹答えて曰く、「臣、王を以て已に之を知れりと為す。王故ぞ尚ほ未だ之を知らざるや。王の亡せし所以は、賢を以てなり。天下の王は皆不肖にして、王の賢なるを惡むや、因りて相與に兵を合せて王を攻む。此れ王の亡せし所以なり。」湣王慨焉として太息して曰く、「賢は固より是くの若く其れ苦しきか。」此も亦た其の所以を知らざるなり。此れ公玉丹の過つ所以なり。
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呂氏春秋・髙義④荊人、吳人と將に戰わんとす。荊の師寡く、吳の師衆し。荊の將軍子囊曰く、「我、吳人と戰わば、必ず敗れん。王の師を敗り、王の名を辱しめ、壤土を虧くは、忠臣、為すに忍びざるなり。」王に復さずして遁れ、郊に至り、人をして王に復さしめて曰く、「臣請う死せん。」王曰く、「將軍の遁れたるは、其の利為るを以てなり。今誠に利ならば、將軍何ぞ死せん。」子囊曰く、「遁るる者罪無くんば、則ち後世の王の臣為る者、皆不利の名に依りて、臣の遁れたるに效わんとす。是きの若くなれば則ち荊國終に天下に撓められん。」遂に劍に伏して死す。王曰く、「請う將軍の義を成さん。」乃ち之に桐棺三寸を為り、斧鑕を其の上に加う。人主の患は存すれども、存する所以を知らず、亡ぶれども亡ぶる所以を知らず。此れ存亡の數々至る所以なり。郼・岐の廣さにして、萬國の順いしは、此れ從り生ず。荊の國を為すこと四十二世、嘗て乾谿・白公の亂有り、嘗て鄭襄・州侯の避有り、而も今も猶ほ萬乘の大國為るは、其の時臣に子囊の如きもの有ればなりしか。子囊の節は、獨り一世の人臣を厲ますのみに非ざるなり。
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