呂氏春秋 / 開春①
開春始雷則蟄蟲動矣,時雨降則草木育矣,飲食居處適則九竅百節千脈皆通利矣。王者厚其德,積眾善,而鳳皇聖人皆來至矣。共伯和修其行,好賢仁,而海內皆以來為稽矣。周厲之難,天子曠絕,而天下皆來謂矣。以此言物之相應也,故曰行也成也。善說者亦然,言盡理而得失利害定矣,豈為一人言哉?
新字:開春始雷則蟄虫動矣,時雨降則草木育矣,飲食居処適則九竅百節千脈皆通利矣。王者厚其徳,積眾善,而鳳皇聖人皆来至矣。共伯和修其行,好賢仁,而海内皆以来為稽矣。周厲之難,天子曠絶,而天下皆来謂矣。以此言物之相応也,故曰行也成也。善説者亦然,言尽理而得失利害定矣,豈為一人言哉?
書き下し
開春始めて雷すれば、則ち蟄蟲動く。時雨降れば、則ち草木育つ。飲食居處適なれば、則ち九竅・百節・千脈、皆通利なり。王者、其の德を厚くし、衆善を積めば、而ち鳳皇聖人皆來たり至る。共伯和、其の行いを修め、賢仁を好む。而して海內皆以て來たり稽を為す。周厲の難、天子曠絕して、天下皆來たり謂う。此を以て物の相應ずるを言うなり。故に曰く、行えば成るなり、と。善く說く者も亦た然り。言、理を盡くせば、得失利害定まれり。豈に一人の為に言わんや。
現代語訳
春の初めに初雷が鳴れば冬眠していた虫が動き出し、時に応じた雨が降れば草木は育つ。飲食や住まいが適切であれば、九竅・百節・千脈はすべて滞りなく通じる。王者が徳を厚くし多くの善を積めば、鳳凰も聖人もみなやって来る。共伯和は行いを修め賢者や仁者を好んだので、天下の人々が彼を規範と仰いだ。周の厲王の乱で天子の位が十一年も空いたとき、人々はみな共伯和を天子と呼んだ。これは物事が互いに感応することを言うのである。だから「行えば成る」と言うのだ。うまく説く者も同じで、言葉が道理を尽くせば損得利害はおのずと定まる。どうして一人のために言うだけであろうか。
解説
冒頭は自然界の感応を並べ、王者が徳を積めば賢人や瑞祥が自然に集まると説く章の総論です。春雷と冬眠の虫、時雨と草木のように、条件が整えば結果がおのずと現れます。共伯和が周の空位期に天子と仰がれた故事は、力ではなく徳が人心を引き寄せた実例として引かれます。巧みな弁説も同じで、道理を尽くせば利害はおのずと定まると述べます。現代でも、号令や強制でなく、日々の誠実な積み重ねが信頼と人材を呼び込むという組織論に通じます。整えるべき環境を整えれば結果は後からついてくる、という発想です。
この章句が説くこと
感応徳治共伯和周厲王賢人無為自然
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