呂氏春秋 / 明理②
凡生非一氣之化也,長非一物之任也,成非一形之功也。故眾正之所積,其福無不及也;眾邪之所積,其禍無不逮也。其風雨則不適,其甘雨則不降,其霜雪則不時,〔其〕寒暑則不當,陰陽失次,四時易節,人民淫爍不固,禽獸胎消不殖,草木(痺)〔庳〕小不滋,五穀◇敗不成,其以為樂也,若之何哉?故至亂之化,君臣相賊,長少相殺,父子相忍,弟兄相誣,知交相倒,夫妻相冒,日以相危,失人之紀,心若禽獸,長邪苟利,不知義理。
新字:凡生非一気之化也,長非一物之任也,成非一形之功也。故衆正之所積,其福無不及也;衆邪之所積,其禍無不逮也。其風雨則不適,其甘雨則不降,其霜雪則不時,〔其〕寒暑則不当,陰陽失次,四時易節,人民淫爍不固,禽獣胎消不殖,草木(痺)〔庳〕小不滋,五穀◇敗不成,其以為楽也,若之何哉?故至乱之化,君臣相賊,長少相殺,父子相忍,弟兄相誣,知交相倒,夫妻相冒,日以相危,失人之紀,心若禽獣,長邪苟利,不知義理。
書き下し
凡そ生ずるは一氣の化に非ざるなり。長ずるは一物の任に非ざるなり。成るは一形の功に非ざるなり。故に正の積む所衆ければ、其の福及ばざるは無く、邪の積む所衆ければ、其の禍逮ばざるは無きなり。其の風雨は則ち適ならず、其の甘雨は則ち降らず、其の霜雪は則ち時ならず、寒暑は則ち當らず、陰陽は次を失い、四時は節を易え、人民は淫爍して固ならず、禽獸は胎消して殖えず、草木庳小にして滋らず、五穀萎敗して成らず。其の以て樂を為るも、之を若何せん。故に至亂の化は、君臣相賊ない、長少相殺し、父子相忍び、弟兄相誣し、知交相倒し、夫妻相冒す。日々以て相危うくし、人の紀を失い、心は禽獸の若く、邪に長じ利に苟しくし、義理を知らず。
現代語訳
およそ生命は一つの気の働きから生じるのではなく、成長は一つの物の担いによるのではなく、完成は一つの形の功によるのではない。ゆえに、多くの正しいものが積み重なれば、その福は及ばないところがなく、多くの邪なものが積み重なれば、その禍は及ばないところがない。乱世には風雨は適さず、恵みの雨は降らず、霜雪は時をわきまえず、寒暑は当たらず、陰陽は順序を失い、四時は節を違え、人民は乱れて定まらず、鳥獣は死産して殖えず、草木は萎え小さくなって茂らず、五穀は枯れ損なわれて実らない。それで音楽を作っても、どうにもならない。ゆえに極度の乱れの様は、君臣が互いに害し、年長者と年少者が殺し合い、父子が互いに背き、兄弟が互いに欺き、親友が互いに裏切り、夫妻が互いに冒し、日々互いに危うくし合い、人の秩序を失い、心は禽獣のようで、邪に長じ利をむさぼり、義理を知らないのである。
解説
この章句が説くこと
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呂氏春秋・貴信②天行信ならざれば、歲を成すこと能わず。地行信ならざれば、草木大ならず。春の德は風、風、信ならざれば、其の華盛ならず。華盛ならざれば、則ち果實生ぜず。夏の德は暑なり。暑、信ならざれば、其の土肥えず。土肥えざれば、則ち長遂精ならず。秋の德は雨なり。雨、信ならざれば、其の穀堅からず。穀堅かざれば、則ち五種成らず。冬の德は寒なり。寒、信ならざれば、其の地剛ならず。地剛ならざれば、則ち凍閉開かず。天地の大、四時の化すら、猶ほ信ならざるを以て物を成すこと能わず。又況んや人事をや。君臣、信ならずんば、則ち百姓誹謗し、社稷寧かならず。官を處くこと信ならずんば、則ち少、長を畏れず、貴賤相輕んず。賞罰信ならずんば、則ち民易しく法を犯して、使令す可からず。交友、信ならずんば、則ち離散鬱怨して、相親しむこと能わず。百工、信ならずんば、則ち器械苦偽して、丹漆染色貞ならず。夫れ與に始めを為す可く、與に終りを為す可く、與に尊通なる可く、與に卑窮なる可き者は、其れ唯だ信か。信にして又信、身に重襲すれば、乃ち轉に通ず。此を以て人を治むれば、則ち膏雨甘露降り、寒暑四時當たらん。
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呂氏春秋・召類①類同じければ相召き、氣同じければ則ち合し、聲比すれば則ち應ず。故に宮を鼓すれば宮應じ、角を鼓すれば角動く。龍を以て雨を致し、形を以て影を逐う。禍福の自りて來たる所、衆人以て命と為す、焉ぞ其の由る所を知らざる。故に國の亂るるは獨り亂るるのみに非ず、有た必ず寇を召く。獨り亂るるは未だ必ずしも亡びざるなり。寇を召けば則ち以て存する無し。
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文子・微明老子曰く、不義を以て之を得、又た布施せざれば、患い其の身に及ぶ。人の為す能わず、又た以て自ら為す無し。愚人と謂うべし。梟の其の子を愛するに異なる無し。故に「持して之を盈たすは、其の已むに如かず。揣えて之を鋭くすれば、長く保つべからず」。徳の中に道有り、道の中に徳有り。其の化は極むべからず。陽の中に陰有り、陰の中に陽有り。万事尽く然り、勝げて明らかにすべからず。福至れば祥存し、禍至れば祥先んず。祥を見て善を為さざれば、則ち福来たらず。不祥を見て善を行えば、則ち禍至らず。利と害は門を同じくし、禍と福は隣を同じくす。神聖の人に非ざれば之を能く分かつ莫し。故に曰く「禍は福の倚る所、福は禍の伏す所、孰か其の極を知らん」。人の将に疾まんとするや、必ず先ず魚肉の味を甘しとし、国の将に亡びんとするや、必ず先ず忠臣の語を悪む。故に疾の将に死せんとする者は、良医と為すべからず。国の将に亡びんとする者は、忠謀を為すべからず。身に修めて、然る後に以て民を治むべし。家に居りて理治まれば、然る後に官長に移すべし。故に曰く「之を身に修むれば、其の徳乃ち真なり。之を家に修むれば、其の徳乃ち余り有り。之を国に修むれば、其の徳乃ち豊かなり」。民の生活する所以は、衣と食なり。事の衣食に周ければ則ち功有り、衣食に周からざれば則ち功無し。事に功無ければ徳長からず。
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呂氏春秋・本生②夫れ水の性は清し。土は之を抇す。故に清きを得ず。人の性は壽し。物は之を抇す。故に壽きを得ず。物なる者は、性を養う所以にして、性を以て養う所に非ざるなり。今の世の人、惑う者、多く性を以て物を養う。則ち輕重を知らざるなり。輕重を知らざれば、則ち重き者を輕しと為し、輕き者を重しと為す。此の若ければ、則ち動く毎に敗れざる無し。此を以て君と為れば悖り、此を以て臣と為れば亂り、此を以て子と為れば狂う。三者、國に一も有れば、幸い無くして必ず亡びん。
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『淮南子』本經訓山川溪穀を分かち、壤界有らしめ、人の多少眾寡を計り、分數有らしめ、城を築き池を掘り、機械險阻を設けて以て備えと為し、職事を飾り、服等を制し、貴賤を異にし、賢不肖を差ち、誹譽を經め、賞罰を行うに至れば、則ち兵革興りて分爭生じ、民の滅抑夭隱、辜無きを虐殺して罪無きを刑誅すること、是に於いて生ずるなり。天地の合和、陰陽の萬物を陶化するは、皆な人氣に乘ずる者なり。是の故に上下 心を離せば、氣 乃ち上に蒸し、君臣 和せざれば、五穀 為らず。日を距つること冬至四十六日、天は和を含みて未だ降さず、地は氣を懷きて未だ揚げず、陰陽 儲與し、呼吸 浸潭し、風俗を包裹し、萬殊を斟酌し、眾宜に旁薄し、以て相い嘔咐醞釀して、群生を成育す。是の故に春に肅み秋に榮え、冬に雷あり夏に霜あるは、皆な賊氣の生ずる所なり。

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