呂氏春秋 / 古樂⑥
帝顓頊生自若水,實處空桑,乃登為帝。惟天之合,正風乃行,其音若熙熙淒淒鏘鏘。帝顓頊好其音,乃令飛龍作〔樂〕效八風之音,命之曰《承雲》,以祭上帝。乃令鱓先為樂倡,鱓乃偃(浸)〔寢〕,以其尾鼓其腹,其音英〔英〕。
新字:帝顓頊生自若水,実処空桑,乃登為帝。惟天之合,正風乃行,其音若熙熙淒淒鏘鏘。帝顓頊好其音,乃令飛竜作〔楽〕効八風之音,命之曰《承雲》,以祭上帝。乃令鱓先為楽倡,鱓乃偃(浸)〔寝〕,以其尾鼓其腹,其音英〔英〕。
書き下し
帝顓頊は若水自り生まれ、實に空桑に處り、乃ち登りて帝と為る。惟れ天に之れ合い、正風乃ち行われ、其の音熙熙淒淒鏘鏘の若し。帝顓頊、其の音を好み、乃ち飛龍をして作りて八風の音に效わしめ、之を命づけて承雲と曰い、以て上帝を祭る。乃ち鱓をして先づ樂倡為らしむ。鱓乃ち偃寢し、其の尾を以て其の腹を鼓す。其の音英英たり。
現代語訳
帝顓頊は若水のほとりに生まれ、空桑という地に住み、やがて位に昇って帝となった。天のはたらきによく合い、正しい風が吹きめぐり、その音は熙熙・淒淒・鏘鏘と響くようだった。顓頊はその音を好み、飛龍に命じて楽曲を作らせ八方の風の音をまねさせ、『承雲』と名づけて天帝を祭った。さらに鱓(わに)に命じて楽の音頭を取らせると、鱓は仰向けに寝そべり、尾で腹を打った。その音は英英と響いた。
解説
帝顓頊の時代に、風の音をもとにした楽曲『承雲』が生まれた伝説を語る段です。顓頊は天のはたらきに合い、正しい風がめぐって美しい音を響かせたのを好み、飛龍に八方の風の音をまねた楽を作らせて天帝を祭りました。さらに鱓(わに)が仰向けになり尾で腹を打って音頭を取ったという、神話的で生き生きとした描写が添えられます。自然界の風の音や動物の立てる音を、そのまま神への音楽へと昇華させる発想が印象的です。人が自然の音に耳を澄まし、それを模して天地や神と交わろうとする――音楽の起源を自然との交感に見るこの巻の姿勢が、ここでも幻想的な物語として結実しています。
この章句が説くこと
顓頊承雲飛竜八風鱓若水
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