呂氏春秋 / 仲夏③
是月也,天子〔乃〕以雛嘗黍,羞以含桃,先薦寢廟。令民無刈藍以染,無燒炭,無暴布。門閭無閉,關市無索。挺重囚,益其食。游牝別其群,則縶騰駒,班馬正。
新字:是月也,天子〔乃〕以雛嘗黍,羞以含桃,先薦寝廟。令民無刈藍以染,無焼炭,無暴布。門閭無閉,関市無索。挺重囚,益其食。游牝別其群,則縶騰駒,班馬正。
書き下し
是の月や、天子、雛を以て黍を嘗め、羞むるに含桃を以てし、先づ寢廟に薦む。民をして藍を刈りて以て染むること無く、炭を燒くこと無く、布を暴すこと無からしむ。門閭は閉づること無く、關市は索むること無からしむ。重囚を挺め、其の食を益す。游牝は其の群を別ち、則ち騰駒を縶ぎ、馬正を班ぐ。
現代語訳
この月には、天子は雛鳥を添えて黍を味わい、ゆすらうめを供え物とし、まず祖先のみたまや(寝廟)に薦める。民には、藍を刈って染物をすることをやめさせ、炭を焼くこともやめさせ、布を日にさらすこともやめさせる。町の門を閉ざさず、関所や市場で通行税や品物を求めさせない。重罪人の拘束をゆるめ、その食事を増やす。放牧していた牝馬は身ごもっているので群れから離し、発情した若駒はつなぎとめ、馬に関する政令を告げ知らせる。
解説
仲夏の天子が行うべき恵みの政や生活上の禁忌を並べた段です。旬の黍やゆすらうめをまず祖先に供えるのは、収穫を独り占めせず祖霊と分かち合う礼です。藍の刈り取りや炭焼き、布さらしを止めさせるのは、火気や労働を控え、盛夏の陽気に逆らわない配慮でしょう。門を開き関市の税を免じ、囚人を寛大に扱うのは、万物が育つ季節に殺伐さを避け寛容を旨とする思想です。放牧の牝馬や若駒への配慮も、生命の営みを守る点で一貫します。現代の季節に応じた自粛や、弱者への配慮を重んじる政治感覚に通じる内容です。
この章句が説くこと
寝廟含桃藍染関市重囚牝馬
関連する章句
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礼記・月令有司に命じて民の為に山川百源を祈祀し、大いに帝に雩(う)し、盛楽を用いしむ。乃ち百県に命じて百辟卿士の民に益有りし者を雩祀し、以て穀実を祈らしむ。 農乃ち黍(きび)を登らせ、是の月や、天子乃ち雛(ひな)を以て黍を嘗み、羞(すす)むるに含桃(がんとう)を以てし、先ず寝廟に薦む。 民に令して藍(あい)を艾(か)りて以て染むること毋く、灰を焼くこと毋く、布を暴(さら)すこと毋からしむ。門閭(もんりょ)閉ずること毋く、関市(かんし)索(もと)むること毋し。重囚を挺(ゆる)め、其の食を益す。
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呂氏春秋・仲夏①仲夏の月。日は東井に在り、昏に亢中し、旦に危中す。其の日は丙丁、其の帝は炎帝、其の神は祝融、其の蟲は羽、其の音は徵、律は蕤賓に中る。其の數は七、其の味は苦、其の臭は焦、其の祀は竈、祭るには肺を先にす。小暑至り、螳蜋生じ、鶪始めて鳴き、反舌聲無し。天子、明堂の太廟に居り、朱輅に乘り、赤駵を駕し、赤旂を載て、朱衣を衣、赤玉を服び、菽と雞とを食らう。其の器は高にして以て觕なり。壯狡を養う。
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『淮南子』時則訓仲夏の月、招搖は午を指し、昏に亢中し、旦に危中す。其の位は南方、其の日は丙丁、其の蟲は羽、其の音は徵、律は蕤賓に中たり、其の數は七、其の味は苦、其の臭は焦、其の祀は灶、祭には肺を先にす。小暑至り、螳蜋生じ、鵙始めて鳴き、反舌聲無し。天子は赤衣を衣、赤騮に乘り、赤玉を服し、赤旗を載て、菽と雞とを食らい、八風の水を服し、柘を爨き火を燧り、南宮の御女は赤色、赤采を衣、竽笙を吹き、其の兵は戟、其の畜は雞、明堂の太廟に朝す。樂師に命じ、鞀鼙琴瑟管簫を修め、竽篪を調え、鐘磬を飾り、干戚戈羽を執らしむ。有司に命じ、民の爲に山川百源に祈祀し、大いに帝に雩し、盛樂を用いしむ。天子雉を以て黍を嘗め、羞むるに含桃を以てし、先ず寢廟に薦む。民に禁じて藍を刈りて以て染むる無からしめ、灰を燒く毋く、布を暴す毋く、門閭閉ずる無く、關市索むる無く、重囚を挺め、其の食を益し、鰥寡を存し、死事を振わし、游牝は其の群を別ち、騰駒を執え、馬政を班かつ。日長きこと至り、陰陽爭い、死生分かる。君子齋戒し、身を慎みて躁がしくする無く、聲色を節し、滋味を薄くし、百官靜かに、事に徑する無く、以て晏陰の成る所を定む。鹿角解け、蟬始めて鳴き、半夏生じ、木堇榮ゆ。民に禁じて火を發する無からしめ、以て高明に居り、遠く眺望し、丘陵に登り、臺榭に處る可し。仲夏に冬令を行えば、則ち雹霰穀を傷り、道路通ぜず、暴兵來至す。春令を行えば、則ち五穀孰せず、百螣時に起こり、其の國乃ち饑う。秋令を行えば、則ち草木零落し、果實蚤く成り、民疫に殃わる。五月は相を官とし、其の樹は榆なり。
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呂氏春秋・仲春②是の月や、萌牙を安んじ、幼少を養い、諸孤を存む。元日を擇び、人に命じて社せしむ。有司に命じて囹圄を省き、桎梏を去り、肆掠無く、獄訟を止ましむ。
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呂氏春秋・孟夏⑤是の月や、獸を驅りて五穀を害うこと無からしめ、大いに田獵すること無からしむ。農乃ち麥を升ずれば、天子乃ち彘を以て麥を嘗め、先づ寢廟に薦む。
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呂氏春秋・孟夏⑥是の月や、百藥を聚蓄す。糜草死し、麥秋至る。薄刑を斷ち、小辠を決し、輕繫を出だす。蠶事既に畢り、后妃、繭を獻ず。乃ち繭税を収め、桑を以て均と為し、貴賤少長一の如くし、以て郊廟の祭服に給す。

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