呂氏春秋 / 季春⑨
行之是令,而甘雨至三旬。季春行冬令,則寒氣時發,草木皆肅,國有大恐。行夏令,則民多疾疫,時雨不降,山陵不收。行秋令,則天多沈陰,淫雨早降,兵革並起。
新字:行之是令,而甘雨至三旬。季春行冬令,則寒気時発,草木皆粛,国有大恐。行夏令,則民多疾疫,時雨不降,山陵不収。行秋令,則天多沈陰,淫雨早降,兵革並起。
書き下し
是の令を行えば、而ち甘雨至ること三旬なり。季春に冬の令を行えば、則ち寒氣時に發し、草木皆肅み、國に大恐有らん。夏の令を行えば、則ち民に疾疫多く、時雨降らず、山陵收まらず。秋の令を行えば、則ち天、沈陰多く、淫雨早く降り、兵革並び起こる。
現代語訳
この(季春にふさわしい)政令を実行すれば、恵みの雨が三十日にわたって降る。もし季春に冬の政令を行えば、寒気が時ならず発生し、草木はみな縮こまり、国に大きな恐れごとが起こる。夏の政令を行えば、民に疫病が多発し、季節の雨が降らず、山々からの収穫がなくなる。秋の政令を行えば、空はどんより曇りがちになり、長雨が早く降り、戦乱があちこちで起こる。
解説
季春の月令の結びで、季節にかなった政令を行えば恵みの雨が降るが、季節を取り違えた政令を行えば災いが生じると説きます。冬・夏・秋それぞれの令を春に施した場合の弊害を、寒害・疫病・干ばつ・長雨・戦乱として具体的に挙げています。政治を季節の運行と一致させるべきだという、天人相関の思想がよく表れた箇所です。現代の目で見れば因果は素朴ですが、時季に合わない施策は逆効果を招くという警句としては普遍性があります。タイミングを外した対応がかえって混乱を生むという教訓として読めます。
この章句が説くこと
甘雨冬令夏令秋令天人相関時宜
関連する章句
-
呂氏春秋・季夏⑦是の令を行えば、是の月、甘雨三たび至る。三旬は二日なり。季夏に春の令を行えば、則ち穀實解落し、國に風欬多く、人乃ち遷徙す。秋の令を行えば、則ち丘隰に水潦あり、禾稼熟さず、乃ち女災多し。冬の令を行えば、則ち寒氣時ならず、鷹隼早く鷙え、四鄙入りて保ず。
-
呂氏春秋・季秋⑧季秋に夏の令を行えば、則ち其の國大水あり、冬藏殃敗し、民に鼽窒多し。冬の令を行えば、則ち國に盜賊多く、邊境寧からず、土地分裂す。春の令を行えば、則ち暖風來たり至り、民氣解墮し、師旅必ず興る。
-
呂氏春秋・孟夏⑧是の令を行えば、而ち甘雨至ること三旬なり。孟夏に秋の令をおこなえば、則ち苦雨數々來たり、五穀滋らず、四鄙入りて保つ。冬の令を行えば、則ち草木早く枯れ、後乃ち大水ありて、其の城郭を敗る。春の令を行えば、則ち蟲蝗、敗を為し、暴風來たり格りて、秀草實らず。
-
呂氏春秋・仲冬⑥仲冬に夏の令を行えば、則ち其の國は乃ち旱し、氛霧冥冥、雷乃ち聲を發す。秋の令を行えば、則ち天時に汁を雨らし、瓜瓠成らず、國に大兵有り。春の令を行えば、則ち蟲螟敗を為し、水泉減竭し、民に疾癘多し。
-
呂氏春秋・仲秋⑦是の令を行えば、白露降ること三旬なり。仲秋に春の令を行えば、則ち秋雨降らず、草木榮を生じ、國乃ち大恐有り。夏の令を行えば、則ち其の國は旱し、蟄蟲藏れず、五穀復た生ず。冬の令を行えば、則ち風災數々起こり、收雷先だちて行われ、草木早く死す。
-
呂氏春秋・仲春⑧仲春に秋の令を行えば、則ち其の國、大水あり、寒気総りに至り、寇戎、來征す。冬の令を行えば、則ち陽気勝たず、麥乃ち熟せず、民多く相掠む。夏の令を行えば、則ち國乃ち大いに旱し、煗気早く來たり、蟲螟、害を為す。