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呂氏春秋 / 情欲④

世人之事君者,皆以孫叔敖之遇荊莊王為幸,自有道者論之則不然,此荊國之幸。荊莊王好周遊田獵,馳騁弋射,歡樂無遺,盡傅其境內之勞與諸侯之憂於孫叔敖,孫叔敖日夜不息,不得以便生為故,故使莊王功迹著乎竹帛,傳乎後世。

新字:世人之事君者,皆以孫叔敖之遇荊荘王為幸,自有道者論之則不然,此荊国之幸。荊荘王好周遊田猟,馳騁弋射,歓楽無遺,尽傅其境內之労与諸侯之憂於孫叔敖,孫叔敖日夜不息,不得以便生為故,故使荘王功迹著乎竹帛,伝乎後世。

書き下し

世人の君に事うる者、皆孫叔敖の荊の莊王に遇えるを以て幸と為す。有道の者自り之を論ずれば則ち然らず。此れ荊國の幸なり。荊の莊王、周遊田獵、馳騁弋射を好み、歡樂遺す無く、盡く其の境內の勞と諸侯の憂いとを孫叔敖に傅せり。孫叔敖日夜息まず、生に便するを以て故と為すを得ず。故に莊王の功跡をして竹帛に著わし、後世に傳せしめたり。

現代語訳

世間で君主に仕える者は、みな孫叔敖が楚の荘王に名君として出会えたことを幸運だと考える。しかし道を心得た者の立場から論じれば、そうではない。むしろこれは楚の国にとっての幸運なのだ。楚の荘王は各地を巡っての狩猟や、馬を駆っての弓射を好み、歓楽を尽くして余すところがなく、国内の政務の労苦と諸侯との外交の心配ごとをすべて孫叔敖に押しつけた。孫叔敖は昼も夜も休まず働き、自分の生命をいたわることを本分とする余裕もなかった。だからこそ荘王の功績が書物に記され、後世に伝えられたのである。

解説

この段は、名宰相・孫叔敖と楚の荘王の関係を、養生の観点から捉え直します。世間は、孫叔敖が名君荘王に仕えられたことを幸運と見ますが、呂氏春秋は逆に、これは孫叔敖個人ではなく楚の国の幸運だと言います。荘王は狩猟や歓楽にふけり、政務も外交も孫叔敖に丸投げしたため、孫叔敖は昼夜休まず働き、自分の生命をいたわる余裕を持てなかったからです。功業は残っても、そのために身をすり減らした点を惜しむのです。前段の生を内に虧くという議論に連なる具体例といえます。現代でも、成果や評価の陰で心身を犠牲にしていないか、働き方と生命の重さを問い直す視点として読むことができます。

この章句が説くこと

情欲孫叔敖楚の荘王養生過労功業

この一句を、あなたの毎日に。

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