呂氏春秋 / 仲春⑥
是月也,無竭川澤,無漉陂池,無焚山林。天子乃獻羔開冰,先薦寢廟。上丁,命樂正,入舞舍采,天子乃率三公九卿諸侯親往視之。中丁,又命樂正,入學習樂。
新字:是月也,無竭川沢,無漉陂池,無焚山林。天子乃献羔開冰,先薦寝廟。上丁,命楽正,入舞舎采,天子乃率三公九卿諸侯親往視之。中丁,又命楽正,入学習楽。
書き下し
是の月や、川澤を竭くすこと無く、陂池を漉くすこと無く、山林を焚くこと無からしむ。天子乃ち羔を獻じ、冰を開き、先づ寝廟に薦む。上丁に、樂正に命じて學に入り舞を習わしめ、采を舎かしむ。天子乃ち三公九卿諸侯を率いて親ら往きて之を視る。中丁に、又樂正に命じ、學に入り樂を習わしむ。
現代語訳
この月には、川や沼をくみ尽くさせず、ため池をさらい尽くさせず、山林を焼かせない。天子は子羊を供えて氷室を開き、まず寝廟に氷を供える。上旬の丁の日には、楽官の長(楽正)に命じて学舎に入り舞を習わせ、供え物の采帛を置いて先師をまつらせる。天子は三公・九卿・諸侯を率いてみずから出向いてこれを視察する。中旬の丁の日には、また楽正に命じて学舎に入り音楽を習わせる。
解説
この段は、春の資源保護と、礼楽の教育・儀礼を並べて説きます。前半では、川・沼・ため池をくみ尽くさず、山林を焼かないよう命じ、生きものが育つ季節に自然を根こそぎにしない節度を求めます。これは持続的な資源利用にも通じる発想です。後半では、氷室を開いて祖廟に供え、楽官に舞や音楽を学ばせ、天子みずから視察するなど、礼楽を重んじる政治を描きます。呂氏春秋は、季節にかなった自然への配慮と文化の涵養をともに為政の務めとします。現代でも、自然を使い尽くさない節度と、次世代の教育・文化への投資という二つの視点として読むことができます。
この章句が説くこと
仲春資源保護礼楽楽正氷室教育
関連する章句
-
呂氏春秋・孟春⑤是の月や、樂正に命じ、學に入り舞を習わしむ。乃ち祭典を修め、命じて山林川澤を祀るに、犠牲は牝を用いること無からしむ。伐木を禁止し、巣を覆すこと無く、孩蟲・胎夭・飛鳥を殺すこと無く、麛とること無く、卵とること無く、大衆を聚むること無く、城郭を置くこと無く、骼を揜い髊を霾めしむ。
-
呂氏春秋・仲春①仲春の月。日は奎に在り。昏に弧中し、旦に建星中す。其の日は甲乙、其の帝は太暤、其の神は句芒、其の蟲は麟、其の音は角、律は夾鐘に中る。其の數は八、其の味は酸、其の臭は羶。其の祀は戸、祭るには脾を先にす。初めて雨水し、桃李華さく。蒼庚鳴き、鷹化して鳩と為る。天子は青陽の太廟に居り、鸞輅に乘り蒼龍を駕し、青旂を載て、青衣を衣、青玉を服び、麥と羊とを食らう。其の器は疏にして以て達す。
-
呂氏春秋・仲春②是の月や、萌牙を安んじ、幼少を養い、諸孤を存む。元日を擇び、人に命じて社せしむ。有司に命じて囹圄を省き、桎梏を去り、肆掠無く、獄訟を止ましむ。
-
呂氏春秋・季冬②是の月や、漁師に命じて始めて漁せしむ。天子親ら往き、乃ち魚を嘗め、先づ寢廟に薦む。冰方に盛んに、水澤も復んなり。命じて冰を取らしむ。冰已に入れば、令して民に告げ、五種を出ださしめ、司農に命じて、耦耕の事を計り、耒耜を修め、田器を具えしむ。樂師に命じて、大いに吹を合わせしめて罷む。乃ち四監に命じて、薪柴を收秩せしめ、以て寢廟及び百祀の薪燎に供す。
-
呂氏春秋・孟春②是の月や、立春を以てす。立春に先立つこと三日、太史、之を天子に謁げて曰く、「某日立春なり、盛徳は木に在り。」天子乃ち齋す。立春の日、天子親ら三公・九卿・諸侯・大夫を率いて、以て春を東郊に迎う。還りて、乃ち公卿諸侯大夫を朝に賞す。相に命じて徳を布き令を和らげ、慶を行い惠を施し、下は兆民に及ばしむ。慶賜遂行して、當らざる有ること無からしむ。迺ち太史に命じ、典を守り法を奉じ、天の日月星辰の行を司り、宿離忒わず、經紀を失うこと無く、初めを以て常と為さしむ。
-
呂氏春秋・仲夏③是の月や、天子、雛を以て黍を嘗め、羞むるに含桃を以てし、先づ寢廟に薦む。民をして藍を刈りて以て染むること無く、炭を燒くこと無く、布を暴すこと無からしむ。門閭は閉づること無く、關市は索むること無からしむ。重囚を挺め、其の食を益す。游牝は其の群を別ち、則ち騰駒を縶ぎ、馬正を班ぐ。