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論語と算盤 / 立志と学問・勇猛心の養成法

勇気の修養には肉体上の修養と共に、内省的の修養に注意せねばならぬ、読書の上に於て、古来勇者の言行に私淑して感化を受くるもよし、また長上の感化を受け、説話を聴いて、深く身に体し行ふ習慣を養成し、一歩々々剛健なる精神を向上せしめ、正義に関する趣味と自信とを養つて、欣び望んで義に進むまでに到れば、勇気は自ら生じて来るであらう、唯注意すべきことは、呉れ〴〵も青年時代の血気に逸り、前後の分別を誤つて血気を悪用し、勇気を誤り用ゐて暴慢なる行動を執るやうなことがあつてはならぬ、品性の劣等なるものは勇気にあらずして、自然野卑狂暴となり、却つて社会に害毒を流し、遂には一身を滅亡するに到るものであるから、此点はよく〳〵注意し、平生の修養を怠つてはならぬ。

書き下し

勇気の修養には肉体上の修養とともに、内省的の修養に注意せねばならぬ。読書の上において、古来勇者の言行に私淑して感化を受くるもよし、また長上の感化を受け、説話を聴いて、深く身に体し行う習慣を養成し、一歩一歩剛健なる精神を向上せしめ、正義に関する趣味と自信とを養って、喜び望んで義に進むまでに到れば、勇気は自ずと生じて来るであろう。ただ注意すべきことは、くれぐれも青年時代の血気にはやり、前後の分別を誤って血気を悪用し、勇気を誤り用いて暴慢なる行動を執るようなことがあってはならぬ。品性の劣等なるものは勇気にあらずして、自然野卑狂暴となり、かえって社会に害毒を流し、ついには一身を滅亡するに到るものであるから、この点はよくよく注意し、平生の修養を怠ってはならぬ。

現代語訳

勇気を養うには、身体の鍛錬とともに、内を省みる修養にも気をつけねばならない。書物を読んで、昔の勇者の言行を慕い、その感化を受けるのもよい。また目上の人の感化を受け、その話を聴いて深く身につけて行う習慣を養い、一歩ずつ剛健な精神を高め、正義を好む気持ちと自信とを育てる。喜んで義に進めるところまで来れば、勇気はおのずと生まれてくるだろう。ただし注意すべきことがある。くれぐれも、若さの血気にはやって前後の分別を失い、血気を悪用し、勇気を取り違えて傲慢なふるまいに出てはならない。品性の劣った者のそれは勇気ではなく、自然と野卑で狂暴なものになり、かえって社会に害毒を流し、ついには身を滅ぼすに至る。この点はよくよく注意して、日ごろの修養を怠ってはならない。

解説

勇気は生まれつきではなく養えるものだ、というのが渋沢の立場である。しかも方法は二段構えになっている。前段では肉体、とくに下腹部の鍛錬を挙げる。腹に力が入る習慣ができれば頭に血が上らず、沈着になり、それが勇気になる——武術家が沈着で敏活なのはこのためだと言う。後段がこの一節で、内省の修養にあたる。勇者の言行に私淑し、正義を好む趣味と自信を育て、喜んで義に進めるところまで持っていく。そして最後に線を引く。血気にはやった行動は勇気ではない。品性が伴わなければ、それは野卑と狂暴であって、社会に害を流し、自分も滅ぶ。度胸と勇気を取り違えないための一段である。

この章句が説くこと

勇猛心の養成下腹部の鍛錬内省的の修養血気と勇気

この一句を、あなたの毎日に。

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