六韜 / 軍用
武王問太公曰:「王者舉兵,三軍器用,攻守之具,科品眾寡,豈有法乎?」太公曰:「大哉!王之問也。夫攻守之具,各有科品,此兵之大威也。」武王曰:「願聞之。」太公曰:「凡用兵之大數,將甲士萬人,法用:武衝大扶胥三十六乘,材士、強弩、矛戟為翼,一車二十四人,推之以八尺車輪,車上立旗鼓,兵法謂之震駭,陷堅陳,敗強敵。武翼大櫓、矛戟扶胥七十二具,材士、強弩、矛戟為翼,以五尺車輪,絞車連弩自副。陷堅陳,敗強敵。提翼小櫓扶胥一百四十四具,絞車連弩自副。以鹿車輪,陷堅陳,敗強敵。大黃參連弩大扶胥三十六乘。材士強弩矛戟為翼,飛鳧電影自副。飛鳧赤莖白羽,以銅為首;電影青莖赤羽,以鐵為首,晝則以絳縞,長六尺,廣六寸,為光耀;夜則以白縞,長六尺,廣六寸,為流星。陷堅陳,敗步騎。大扶胥衝車三十六乘,螳蜋武士共載,可以縱擊橫、可以敗敵。輜車騎寇,一名電車,兵法謂之電擊。陷堅陳,敗步騎。寇夜來前。矛戟扶胥輕車一百六十乘,螳蜋武士三人共載,兵法謂之霆擊。陷堅陳,敗步騎。方首鐵棓維朌,重十二斤,柄長五尺以上,千二百枚,一名天棓。大柯斧,刃長八寸,重八斤,柄長五尺以上,千二百枚,一名天鉞。方首鐵鎚,重八斤,柄長五尺以上,千二百枚,一名天鎚。敗步騎群寇。飛鉤,長八寸,鉤芒長四寸,柄長六尺以上,千二百枚。以投其眾。三軍拒守,木螳蜋劍刃扶胥,廣二丈,百二十具,一名行馬。平易地,以步兵敗車騎。木蒺藜,去地二尺五寸,百二十具。敗步騎,要窮寇;遮走北。軸旋短衝矛戟扶胥,百二十具,黃帝所以敗蚩尤氏。敗步騎,要窮寇,遮走北。狹路微徑,張鐵蒺藜,芒高四寸,廣八寸,長六尺以上,千二百具。敗步騎。突暝來前促戰,白刃接,張地羅,鋪兩鏃蒺藜,參連織女,芒間相去二寸,萬二千具。曠野草中,方胸鋋矛,千二百具;張鋋矛法,高一尺五寸。敗步騎,要窮寇,遮走北。狹路微徑,地陷,鐵械鎖參連,百二十具。敗步騎,要窮寇,遮走北。壘門拒守,矛戟小櫓十二具,絞車連弩自副。三軍拒守,天羅、虎落鎖連,一部廣一丈五尺,高八尺,百二十具;虎落劍刃扶胥,廣一丈五尺,高八尺,五百二十具。渡溝塹,飛橋一間,廣一丈五尺,長二丈以上,著轉關轆轤八具,以環利通索張之。渡大水,飛江廣一丈五尺,長二丈以上,八具,以環利通索張之。天浮鐵螳蜋,矩內圓外,徑四尺以上,環絡自副,三十二具。以天浮張飛江,濟大海,謂之天潢,一名天舡。山林野居,結虎落柴營,環利鐵鎖,長二丈以上,千二百枚,環利大通索,大四寸,長四丈以上,六百枚。環利中通索,大二寸,長四丈以上,二百枚。環利小徽縲,長二丈以上,萬二千枚。天雨,蓋重車上板,結枲鉏鋙,廣四尺,長四丈以上。車一具,以鐵杙張之。伐木大斧,重八斤,柄長三尺以上,三百枚。棨钁,刃廣六寸,柄長五尺以上,三百枚。銅築固為垂,長五尺以上,三百枚。鷹爪,方胸鐵杷,柄長七尺以上,三百枚。方胸鐵叉,柄長七尺以上,三百枚。方胸兩枝鐵叉,柄長七尺以上,三百枚。芟草木大鎌,柄長七尺以上,三百枚。大櫓,刀重八斤,柄長六尺,三百枚。委環鐵杙,長三尺以上,三百枚。椓杙大鎚,重五斤,柄長二尺以上,百二十具。甲士萬人,強弩六千,戟楯二千,矛楯二千,修治攻具,砥礪兵器,巧手三百人。此舉兵、軍用之大數也。」武王曰:「允哉。」
新字:武王問太公曰:「王者舉兵,三軍器用,攻守之具,科品衆寡,豈有法乎?」太公曰:「大哉!王之問也。夫攻守之具,各有科品,此兵之大威也。」武王曰:「願聞之。」太公曰:「凡用兵之大数,将甲士万人,法用:武衝大扶胥三十六乗,材士、強弩、矛戟為翼,一車二十四人,推之以八尺車輪,車上立旗鼓,兵法謂之震駭,陥堅陳,敗強敵。武翼大櫓、矛戟扶胥七十二具,材士、強弩、矛戟為翼,以五尺車輪,絞車連弩自副。陥堅陳,敗強敵。提翼小櫓扶胥一百四十四具,絞車連弩自副。以鹿車輪,陥堅陳,敗強敵。大黄参連弩大扶胥三十六乗。材士強弩矛戟為翼,飛鳧電影自副。飛鳧赤茎白羽,以銅為首;電影青茎赤羽,以鉄為首,昼則以絳縞,長六尺,広六寸,為光耀;夜則以白縞,長六尺,広六寸,為流星。陥堅陳,敗歩騎。大扶胥衝車三十六乗,螳蜋武士共載,可以縦撃横、可以敗敵。輜車騎寇,一名電車,兵法謂之電撃。陥堅陳,敗歩騎。寇夜来前。矛戟扶胥軽車一百六十乗,螳蜋武士三人共載,兵法謂之霆撃。陥堅陳,敗歩騎。方首鉄棓維朌,重十二斤,柄長五尺以上,千二百枚,一名天棓。大柯斧,刃長八寸,重八斤,柄長五尺以上,千二百枚,一名天鉞。方首鉄鎚,重八斤,柄長五尺以上,千二百枚,一名天鎚。敗歩騎群寇。飛鉤,長八寸,鉤芒長四寸,柄長六尺以上,千二百枚。以投其衆。三軍拒守,木螳蜋剣刃扶胥,広二丈,百二十具,一名行馬。平易地,以歩兵敗車騎。木蒺藜,去地二尺五寸,百二十具。敗歩騎,要窮寇;遮走北。軸旋短衝矛戟扶胥,百二十具,黄帝所以敗蚩尤氏。敗歩騎,要窮寇,遮走北。狭路微径,張鉄蒺藜,芒高四寸,広八寸,長六尺以上,千二百具。敗歩騎。突暝来前促戦,白刃接,張地羅,鋪両鏃蒺藜,参連織女,芒間相去二寸,万二千具。曠野草中,方胸鋋矛,千二百具;張鋋矛法,高一尺五寸。敗歩騎,要窮寇,遮走北。狭路微径,地陥,鉄械鎖参連,百二十具。敗歩騎,要窮寇,遮走北。塁門拒守,矛戟小櫓十二具,絞車連弩自副。三軍拒守,天羅、虎落鎖連,一部広一丈五尺,高八尺,百二十具;虎落剣刃扶胥,広一丈五尺,高八尺,五百二十具。渡溝塹,飛橋一間,広一丈五尺,長二丈以上,著転関轆轤八具,以環利通索張之。渡大水,飛江広一丈五尺,長二丈以上,八具,以環利通索張之。天浮鉄螳蜋,矩内円外,径四尺以上,環絡自副,三十二具。以天浮張飛江,済大海,謂之天潢,一名天舡。山林野居,結虎落柴営,環利鉄鎖,長二丈以上,千二百枚,環利大通索,大四寸,長四丈以上,六百枚。環利中通索,大二寸,長四丈以上,二百枚。環利小徽縲,長二丈以上,万二千枚。天雨,蓋重車上板,結枲鉏鋙,広四尺,長四丈以上。車一具,以鉄杙張之。伐木大斧,重八斤,柄長三尺以上,三百枚。棨钁,刃広六寸,柄長五尺以上,三百枚。銅築固為垂,長五尺以上,三百枚。鷹爪,方胸鉄杷,柄長七尺以上,三百枚。方胸鉄叉,柄長七尺以上,三百枚。方胸両枝鉄叉,柄長七尺以上,三百枚。芟草木大鎌,柄長七尺以上,三百枚。大櫓,刀重八斤,柄長六尺,三百枚。委環鉄杙,長三尺以上,三百枚。椓杙大鎚,重五斤,柄長二尺以上,百二十具。甲士万人,強弩六千,戟楯二千,矛楯二千,修治攻具,砥礪兵器,巧手三百人。此舉兵、軍用之大数也。」武王曰:「允哉。」
書き下し
武王 太公に問ひて曰く、「王者 兵を挙ぐるに、三軍の器用、攻守の具、科品の衆寡、豈に法有りや」と。太公曰く、「大なるかな、王の問ひや。夫れ攻守の具は、各々科品有り、此れ兵の大威なり」と。武王曰く、「願はくは之を聞かん」と。太公曰く、「凡そ用兵の大数、甲士万人を将ゐるには、法として用ふ。武衝大扶胥三十六乗、材士・強弩・矛戟を翼と為し、一車二十四人、之を推すに八尺の車輪を以てし、車上に旗鼓を立つ。兵法に之を震駭と謂ふ。堅陳を陥れ、強敵を敗る。武翼大櫓・矛戟扶胥七十二具、材士・強弩・矛戟を翼と為し、五尺の車輪を以てし、絞車連弩 自ら副ふ。堅陳を陥れ、強敵を敗る。提翼小櫓扶胥一百四十四具、絞車連弩 自ら副ふ。鹿車輪を以てし、堅陳を陥れ、強敵を敗る。大黄参連弩大扶胥三十六乗、材士・強弩・矛戟を翼と為し、飛鳧・電影 自ら副ふ。飛鳧は赤茎白羽、銅を以て首と為し、電影は青茎赤羽、鉄を以て首と為す。昼は則ち絳縞を以てし、長さ六尺、広さ六寸、光耀と為し、夜は則ち白縞を以てし、長さ六尺、広さ六寸、流星と為す。堅陳を陥れ、歩騎を敗る。大扶胥衝車三十六乗、螳蜋の武士 共に載り、以て縦もて横を撃つべく、以て敵を敗るべし。輜車の騎寇、一名を電車と曰ひ、兵法に之を電撃と謂ふ。堅陳を陥れ、歩騎を敗る。寇の夜 来り前むに備ふ。矛戟扶胥軽車一百六十乗、螳蜋の武士三人 共に載る。兵法に之を霆撃と謂ふ。堅陳を陥れ、歩騎を敗る。方首の鉄棓維朌、重さ十二斤、柄の長さ五尺以上、千二百枚、一名を天棓と曰ふ。大柯斧、刃の長さ八寸、重さ八斤、柄の長さ五尺以上、千二百枚、一名を天鉞と曰ふ。方首の鉄鎚、重さ八斤、柄の長さ五尺以上、千二百枚、一名を天鎚と曰ふ。歩騎の群寇を敗る。飛鉤、長さ八寸、鉤芒の長さ四寸、柄の長さ六尺以上、千二百枚。以て其の衆に投ず。三軍の拒守には、木螳蜋剣刃扶胥、広さ二丈、百二十具、一名を行馬と曰ふ。平易の地にては、歩兵を以て車騎を敗る。木蒺藜、地を去ること二尺五寸、百二十具。歩騎を敗り、窮寇を要し、走北を遮る。軸旋短衝矛戟扶胥、百二十具、黄帝の蚩尤氏を敗りし所以なり。歩騎を敗り、窮寇を要し、走北を遮る。狭路微径には、鉄蒺藜を張る。芒の高さ四寸、広さ八寸、長さ六尺以上、千二百具。歩騎を敗る。突暝 来り前みて戦を促し、白刃 相接するには、地羅を張り、両鏃蒺藜・参連織女を鋪き、芒の間 相去ること二寸、万二千具。曠野の草中には、方胸の鋋矛千二百具、鋋矛を張るの法、高さ一尺五寸。歩騎を敗り、窮寇を要し、走北を遮る。狭路微径にして地の陥るところには、鉄械鎖参連、百二十具。歩騎を敗り、窮寇を要し、走北を遮る。塁門の拒守には、矛戟小櫓十二具、絞車連弩 自ら副ふ。三軍の拒守には、天羅・虎落鎖連、一部の広さ一丈五尺、高さ八尺、百二十具。虎落剣刃扶胥、広さ一丈五尺、高さ八尺、五百二十具。溝塹を渡るには、飛橋一間、広さ一丈五尺、長さ二丈以上、転関・轆轤を著くること八具、環利通索を以て之を張る。大水を渡るには、飛江、広さ一丈五尺、長さ二丈以上、八具、環利通索を以て之を張る。天浮鉄螳蜋、内は矩にして外は円、径四尺以上、環絡 自ら副ひ、三十二具。天浮を以て飛江を張り、大海を済る、之を天潢と謂ひ、一名を天舡と曰ふ。山林に野居するには、虎落柴営を結ぶ。環利鉄鎖、長さ二丈以上、千二百枚。環利大通索、大いさ四寸、長さ四丈以上、六百枚。環利中通索、大いさ二寸、長さ四丈以上、二百枚。環利小徽縲、長さ二丈以上、万二千枚。天雨には、重車の上板を蓋ふに、枲を結びて鉏鋙たらしむ。広さ四尺、長さ四丈以上、車ごとに一具、鉄杙を以て之を張る。木を伐る大斧、重さ八斤、柄の長さ三尺以上、三百枚。棨钁、刃の広さ六寸、柄の長さ五尺以上、三百枚。銅築固の垂と為すもの、長さ五尺以上、三百枚。鷹爪、方胸の鉄杷、柄の長さ七尺以上、三百枚。方胸の鉄叉、柄の長さ七尺以上、三百枚。方胸両枝の鉄叉、柄の長さ七尺以上、三百枚。草木を芟る大鎌、柄の長さ七尺以上、三百枚。大櫓、刀の重さ八斤、柄の長さ六尺、三百枚。委環の鉄杙、長さ三尺以上、三百枚。杙を椓つ大鎚、重さ五斤、柄の長さ二尺以上、百二十具。甲士万人には、強弩六千、戟楯二千、矛楯二千、攻具を修治し兵器を砥礪する巧手三百人。此れ兵を挙ぐる軍用の大数なり」と。武王曰く、「允なるかな」と。
現代語訳
武王が太公に尋ねた。「王者が兵を起こすとき、全軍の道具立て、攻めと守りの装備は、その種類と数量にきまりがあるのでしょうか」。太公は答えた。「大きな問いです。攻守の装備にはそれぞれ規格があり、これこそ軍の大きな威力の源です」。武王が「ぜひ聞かせてください」と言うと、太公は答えた。「およそ用兵のおおよその基準として、甲冑の兵一万人を率いるときは、次のように定めます。武衝大扶胥という大型の戦車が三十六台。腕利きの兵、強力な弩、矛と戟の部隊がその両翼を固め、一台に二十四人、八尺の車輪で押し進め、車上には旗と太鼓を立てる。兵法ではこれを震駭と呼び、堅い陣を突き崩し、強敵を打ち破る。武翼大櫓・矛戟扶胥は七十二具。同じく腕利きの兵と強弩・矛戟が両翼を固め、五尺の車輪を用い、絞車連弩を備え付ける。これも堅陣を破り強敵を打ち破る。提翼小櫓扶胥は百四十四具、絞車連弩を備え、鹿車の輪を用い、堅陣を破り強敵を打ち破る。大黄参連弩を載せた大扶胥は三十六台。腕利きの兵と強弩・矛戟が両翼を固め、飛鳧・電影という矢を備える。飛鳧は赤い茎に白い羽で銅の鏃、電影は青い茎に赤い羽で鉄の鏃。昼は長さ六尺・幅六寸の深紅の絹を掲げて光耀とし、夜は同じ寸法の白絹を掲げて流星とする。これで堅陣を破り、歩兵と騎兵を打ち破る。大扶胥の衝車は三十六台、螳蜋の武士が同乗し、縦から横へ自在に攻撃して敵を破ることができる。輜車を用いた騎兵部隊は電車とも呼び、兵法ではこれを電撃という。堅陣を破り歩騎を打ち破り、敵が夜に攻め寄せてくるのに備える。矛戟扶胥の軽車は百六十台、螳蜋の武士三人が同乗する。兵法ではこれを霆撃といい、堅陣を破り歩騎を打ち破る。四角い頭の鉄棒である鉄棓維朌は重さ十二斤、柄の長さ五尺以上のものを千二百本、別名を天棓という。大柯斧は刃の長さ八寸、重さ八斤、柄の長さ五尺以上を千二百本、別名を天鉞という。四角い頭の鉄鎚は重さ八斤、柄の長さ五尺以上を千二百本、別名を天鎚という。これらで歩騎の群れを打ち破る。飛鉤は長さ八寸、鉤の先が四寸、柄の長さ六尺以上を千二百本。これを敵兵に投げつける。全軍で守りを固めるときは、木螳蜋剣刃扶胥、幅二丈のものを百二十具、別名を行馬という。平坦な土地では、これで歩兵が車騎を打ち破る。木の蒺藜は地面から二尺五寸の高さのものを百二十具。歩騎を破り、追い詰められた敵を食い止め、逃げる敵をさえぎる。軸旋短衝矛戟扶胥は百二十具、これは黄帝が蚩尤氏を破ったときの装備である。歩騎を破り、窮した敵を食い止め、敗走をさえぎる。狭い道や細い間道では鉄蒺藜を張る。とげの高さ四寸、幅八寸、長さ六尺以上のものを千二百具。これで歩騎を破る。敵が暗がりに紛れて急に攻めかかり、白刃を交える事態には、地羅を張り、両鏃の蒺藜と参連織女を敷き並べ、とげの間隔を二寸として一万二千具。広い野の草むらでは、方胸の鋋矛を千二百具。鋋矛を立てる要領は高さ一尺五寸。これで歩騎を破り、窮した敵を食い止め、敗走をさえぎる。狭い道や細い間道で地面がくぼんだ所には、鉄械鎖参連を百二十具。同じく歩騎を破り、窮した敵を食い止め、敗走をさえぎる。塁の門を守るには、矛戟小櫓を十二具、絞車連弩を備え付ける。全軍で守りを固めるには、天羅と虎落鎖連、一組の幅一丈五尺・高さ八尺のものを百二十具。虎落剣刃扶胥は幅一丈五尺・高さ八尺を五百二十具。堀を渡るには、飛橋一間、幅一丈五尺・長さ二丈以上のものに、転関と轆轤を八具取り付け、環のついた太綱で張り渡す。大河を渡るには、飛江、幅一丈五尺・長さ二丈以上を八具、環のついた太綱で張り渡す。天浮鉄螳蜋は内側が四角く外側が丸く、径四尺以上、環と綱を備えたものを三十二具。天浮で飛江を張って大海を渡る、これを天潢といい、別名を天舡という。山林で野営するには、虎落柴営を結う。環つきの鉄鎖は長さ二丈以上を千二百本、環つきの大綱は太さ四寸・長さ四丈以上を六百本、環つきの中綱は太さ二寸・長さ四丈以上を二百本、環つきの細縄は長さ二丈以上を一万二千本。雨天には、荷車の上板を覆うため、麻を編んで凹凸に噛み合わせたものを、幅四尺・長さ四丈以上、車一台につき一具、鉄の杭で張る。木を伐る大斧は重さ八斤、柄の長さ三尺以上を三百本。棨钁は刃の幅六寸、柄の長さ五尺以上を三百本。銅築固で錘としたものは長さ五尺以上を三百本。鷹爪と呼ぶ方胸の鉄熊手は柄の長さ七尺以上を三百本。方胸の鉄叉は柄の長さ七尺以上を三百本。方胸で二股の鉄叉は柄の長さ七尺以上を三百本。草木を刈る大鎌は柄の長さ七尺以上を三百本。大櫓は刀の重さ八斤、柄の長さ六尺のものを三百本。環をつけた鉄杭は長さ三尺以上を三百本。杭を打ち込む大鎚は重さ五斤、柄の長さ二尺以上を百二十具。甲冑の兵一万人に対して、強弩六千、戟と楯二千、矛と楯二千、そして攻撃器具を修理し武器を研ぎ上げる熟練の職人が三百人。これが兵を起こすにあたっての、軍需装備のおおよその基準です」。武王は「まことにその通りだ」と言った。
解説
この章句が説くこと
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六韜・均兵武王(ぶおう)太公(たいこう)に問(と)ひて曰(いは)く、「車(しゃ)を以(もっ)て歩卒(ほそつ)と戦(たたか)はば、一車(いっしゃ)は幾(いく)ばくの歩卒に当(あ)たり、幾ばくの歩卒は一車に当たるか。騎(き)を以て歩卒と戦はば、一騎(いっき)は幾ばくの歩卒に当たり、幾ばくの歩卒は一騎に当たるか。車を以て騎と戦はば、一車は幾ばくの騎に当たり、幾ばくの騎は一車に当たるか」と。太公曰く、「車(しゃ)は軍(ぐん)の羽翼(うよく)なり、堅陳(けんじん)を陥(おと)し、彊敵(きょうてき)を要(よう)し、走北(そうほく)を遮(さへぎ)る所以(ゆゑん)なり。騎は軍の伺候(しこう)なり、敗軍(はいぐん)を踵(お)ひ、糧道(りょうどう)を絶(た)ち、便寇(べんこう)を撃(う)つ所以なり。故(ゆゑ)に車騎(しゃき)敵(てき)と戦はざれば、則(すなは)ち一騎も歩卒一人(いちにん)に当たる能(あた)はず。三軍(さんぐん)の衆(しゅう)陳(じん)を成(な)して相(あひ)当(あ)たらば、則ち易戦(いせん)の法(ほう)は、一車は歩卒八十人(はちじゅうにん)に当たり、八十人は一車に当たる。一騎は歩卒八人(はちにん)に当たり、八人は一騎に当たる。一車は十騎(じっき)に当たり、十騎は一車に当たる。険戦(けんせん)の法は、一車は歩卒四十人(しじゅうにん)に当たり、四十人は一車に当たる。一騎は歩卒四人(よにん)に当たり、四人は一騎に当たる。一車は六騎(ろっき)に当たり、六騎は一車に当たる。夫(そ)れ車騎は軍の武兵(ぶへい)なり。十乗(じゅうじょう)は千人(せんにん)を敗(やぶ)り、百乗(ひゃくじょう)は万人(まんにん)を敗る。十騎は百人(ひゃくにん)を敗り、百騎(ひゃっき)は千人を走(はし)らす。此(こ)れ其(そ)の大数(たいすう)なり」と。武王曰く、「車騎の吏数(りすう)、陳法(じんぽう)柰何(いかん)」と。太公曰く、「車の吏数を置(お)くは、五車(ごしゃ)に一長(いっちょう)、十車(じっしゃ)に一吏(いちり)、五十車(ごじっしゃ)に一率(いっそつ)、百車(ひゃくしゃ)に一将(いっしょう)なり。易戦の法は、五車を列(れつ)と為(な)し、相(あひ)去(さ)ること四十歩(しじっぽ)、左右(さゆう)十歩(じっぽ)、隊間(たいかん)六十歩(ろくじっぽ)。険戦の法は、車は必ず道(みち)に循(したが)ひ、十車を聚(しゅう)と為し、二十車(にじっしゃ)を屯(とん)と為し、前後(ぜんご)相去ること二十歩(にじっぽ)、左右六歩(ろっぽ)、隊間三十六歩(さんじゅうろっぽ)、五車に一長。縦横(じゅうおう)相去ること二里(にり)、各(おのおの)故道(こどう)に返(かへ)る。騎の吏数を置くは、五騎(ごき)に一長、十騎に一吏、百騎に一率、二百騎(にひゃっき)に一将なり。易戦の法は、五騎を列と為し、前後相去ること二十歩、左右四歩(しほ)、隊間五十歩(ごじっぽ)。険戦は、前後相去ること十歩、左右二歩(にほ)、隊間二十五歩(にじゅうごほ)。三十騎(さんじっき)を一屯(いっとん)と為し、六十騎(ろくじっき)を一輩(いっぱい)と為し、十騎に一吏。縦横相去ること百歩(ひゃっぽ)、周環(しゅうかん)して各(おのおの)故処(こしょ)に復(かへ)る」と。武王曰く、「善(よ)い哉(かな)」と。
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六韜・軍略武王 太公に問ひて曰く、「兵を引ゐて深く諸侯の地に入り、深谿・大谷・険阻の水に遇ふ。吾が三軍 未だ畢く済るを得ざるに、天 暴かに雨ふり、流水 大いに至り、後は前に属くを得ず、舟梁の備へ有る無く、又た水草の資も無し。吾 畢く済り、三軍をして稽留せざらしめんと欲す。之を為すこと奈何」と。太公曰く、「凡そ師を帥ゐ衆を将ゐるに、慮 先づ設けず、器械 備はらず、教へ 素より信ならず、士卒 習はず。此くの若きは、以て王者の兵と為すべからず。凡そ三軍に大事有らば、器械を習ひ用ひざるは莫し。城を攻め邑を囲まば、則ち轒轀・臨衝有り。城中を視んとせば、則ち雲梯・飛楼有り。三軍 行止せば、則ち武衝・大櫓有り。前後に拒守し、道を絶ち街を遮らば、則ち材士・強弩有りて、其の両旁を衝く。営塁を設けば、則ち天羅・武落・行馬・蒺藜有り。昼は則ち雲梯に登りて遠く望み、五色の旗旌を立て、夜は則ち雲火万炬を設け、雷鼓を撃ち、鼙鐸を振ひ、鳴笳を吹く。溝塹を越えば、則ち飛橋・転関・轆轤・鉏鋙有り。大水を済らば、則ち天潢・飛江有り。波に逆らひ流れを上らば、則ち浮海・絶江有り。三軍 用 備はらば、主将 何をか憂へん」と。
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六韜・奇兵武王 太公に問ひて曰く、「凡そ用兵の道、大要は何如」と。太公曰く、「古の善く戦ふ者は、能く天上に戦ふに非ず、能く地下に戦ふに非ず。其の成と敗とは、皆な神勢に由る。之を得る者は昌え、之を失ふ者は亡ぶ。夫れ両陳の間、甲を出だし兵を陳ね、卒を縦ちて行を乱す者は、変を為す所以なり。深草蓊蘙なる者は、逃遁する所以なり。谿谷険阻なる者は、車を止め騎を禦ぐ所以なり。隘塞山林なる者は、少をもつて衆を撃つ所以なり。坳沢窈冥なる者は、其の形を匿す所以なり。清明にして隠るる無き者は、勇力を戦はす所以なり。疾きこと流矢の如く、発機の如き者は、精微を破る所以なり。詭り伏せ奇を設け、遠く張りて誑き誘ふ者は、軍を破り将を擒にする所以なり。四分五裂する者は、円を撃ち方を破る所以なり。其の驚駭に困しむ者は、一をもつて十を撃つ所以なり。其の労倦して暮に舎するに因る者は、十をもつて百を撃つ所以なり。奇伎なる者は、深水を越え江河を渡る所以なり。彊弩長兵なる者は、水を踰えて戦ふ所以なり。長関遠候、暴疾謬遁なる者は、城を降し邑を服する所以なり。鼓行喧囂なる者は、奇謀を行ふ所以なり。大風甚雨なる者は、前を搏ち後を擒にする所以なり。偽つて敵の使と称する者は、糧道を絶つ所以なり。号令を謬らせ、敵と服を同じくする者は、走北に備ふる所以なり。戦ふに必ず義を以てする者は、衆を励まし敵に勝つ所以なり。爵を尊び賞を重くする者は、命を用ふるを勧むる所以なり。刑罰を厳にする者は、罷怠を進むる所以なり。一喜一怒、一与一奪、一文一武、一徐一疾なる者は、三軍を調和し臣下を制一する所以なり。高敞に処る者は、警守する所以なり。阻険を保つ者は、固きを為す所以なり。山林茂穢なる者は、黙して往来する所以なり。深溝高塁にして糧多き者は、持久する所以なり。故に曰く、戦攻の策を知らざれば、以て敵を語るべからず。分移する能はざれば、以て奇を語るべからず。治乱に通ぜざれば、以て変を語るべからず、と。故に曰く、将 仁ならざれば、則ち三軍 親しまず。将 勇ならざれば、則ち三軍 鋭からず。将 智ならざれば、則ち三軍 大いに疑ふ。将 明ならざれば、則ち三軍 大いに傾く。将 精微ならざれば、則ち三軍 其の機を失ふ。将 常に戒めざれば、則ち三軍 其の備へを失ふ。将 彊力ならざれば、則ち三軍 其の職を失ふ、と。故に将は人の司命にして、三軍 之と俱に治まり、之と俱に乱る。賢将を得れば、兵 彊く国 昌ゆ。賢将を得ざれば、兵 弱く国 亡ぶ」と。武王曰く、「善き哉」と。
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六韜・王翼武王 太公に問ひて曰く、「王者 師を帥ゐるには、必ず股肱羽翼ありて以て威神を成す。之を為すこと柰何」と。太公曰く、「凡そ兵を挙げ師を帥ゐるは、将を以て命と為す。命は通達に在り、一術を守らず。能に因りて職を受け、各々長ずる所を取り、時に随ひて変化し、以て綱紀と為す。故に将に股肱羽翼七十二人あり、以て天道に応ず。数を備ふること法の如くし、命理を審らかに知る。殊能異技あらば、万事畢はれり」と。武王曰く、「請ふ、其の目を問はん」と。太公曰く、「腹心一人、潜謀もて卒かなるに応じ、消変を揆り、計謀を揔攬し、民命を保全するを主る。謀士五人、安危を図り、未だ萌さざるを慮り、行能を論じ、賞罰を明らかにし、官位を授け、嫌疑を決し、可否を定むるを主る。天文三人、星暦を司り、風気を候ひ、時日を推し、符験を考へ、災異を校べ、人心去就の機を知るを主る。地利三人、三軍行止の形勢、利害消息、遠近険易、水涸山阻を主り、地の利を失はず。兵法九人、異同を講論し、行事の成敗を論じ、兵器を簡練し、非法を刺挙するを主る。通糧四人、飲食・蓄積を度り、糧道を通じ、五穀を致し、三軍をして困乏せざらしむるを主る。奮威四人、材力を択び、兵革を論じ、風馳電撃して由る所を知らざらしむるを主る。伏鼓旗三人、鼓旗を伏せ、耳目を明らかにし、符節を詭り、号令を謬らせ、闇忽として往来し、出入すること神の若くするを主る。股肱四人、重きに任じ難きを持し、溝塹を修め、壁塁を治め、以て守禦に備ふるを主る。通材三人、遺を拾ひ過ちを補ひ、賓客に応偶し、論議談語し、患ひを消し結ぼれを解くを主る。権士三人、奇譎を行ひ、殊異を設け、人の識る所に非ざる、窮まりなきの変を行ふを主る。耳目七人、往来して言を聴き変を視、四方の事、軍中の情を覧るを主る。爪牙五人、威武を揚げ、三軍を激励し、難を冒して鋭を攻めしめ、疑慮する所なからしむるを主る。羽翼四人、名誉を揚げ、遠方を震はせ、四境を揺動して以て敵の心を弱むるを主る。遊士八人、姦を伺ひ変を候ひ、人情を開闔し、敵の意を観て、以て間諜と為すを主る。術士二人、譎詐を為し、鬼神に依託して以て衆心を惑はすを主る。方士二人、百薬を主り、以て金瘡を治し、以て万病を痊やす。法算二人、三軍の営壁・糧食・財用の出入を計会するを主る」と。
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六韜・動静武王 太公に問ひて曰く、「兵を引ゐて深く諸侯の地に入り、敵の軍と相当たり、両陳 相望み、衆寡・彊弱 相等しく、未だ敢へて先づ挙げず。吾 敵人の将帥をして恐懼せしめ、士卒をして必ず傷ましめ、行陳をして固からざらしめ、後陳をして走らんと欲せしめ、前陳をして数しば顧みしめ、鼓譟して之に乗じ、敵人 遂に走らしめんと欲す。之を為すこと奈何」と。太公曰く、「此くの如き者は、我が兵を発し、寇を去ること十里にして其の両旁に伏せしめ、車騎は百里にして其の前後を越えしむ。其の旌旗を多くし、其の金鼓を益し、戦 合はば、鼓譟して俱に起こる。敵将は必ず恐れ、其の軍は驚駭し、衆寡 相救はず、貴賤 相待たず、敵人は必ず敗れん」と。武王曰く、「敵の地勢、以て其の両旁に伏す可からず、車騎も又た以て其の前後を越ゆる無し。敵 我が慮を知り、先づ其の備へを施す。我が士卒は心 傷み、将帥は恐懼し、戦へば則ち勝たず。之を為すこと奈何」と。太公曰く、「微なるかな、王の問ひや。此くの如き者は、戦ふに先だつこと五日、我が遠候を発し、往きて其の動静を視しむ。審らかに其の来たるを候ひ、伏を設けて之を待つ。必ず死地に於いて、敵と相避く。我が旌旗を遠ざけ、我が行陳を疏かにす。必ず其の前に奔り、敵と相当たる。戦 合はば而ち走り、金を撃ちて止むこと無かれ。三里にして還らば、伏兵 乃ち起こる。或いは其の両旁を陥れ、或いは其の前後を撃ち、三軍 疾く戦はば、敵人は必ず走らん」と。武王曰く、「善いかな」と。
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六韜・必出武王 太公に問ひて曰く、「兵を引ゐて深く諸侯の地に入り、敵人 四合して我を囲み、我が帰道を断ち、我が糧食を絶つ。敵人 既に衆く、糧食 甚だ多く、険阻 又た固し。我 必ず出でんと欲す。之を為すこと奈何」と。太公曰く、「必出の道は、器械を宝と為し、勇闘を首と為す。審らかに敵人の空虚の地、人無きの処を知らば、以て必ず出づべし。将士 人ごとに玄旗を持ち、器械を操り、銜枚を設け、夜に出づ。勇力・飛足・冒将の士は、前に居りて塁を平らげ、軍の為に道を開く。材士・強弩は伏兵と為し、後に居る。弱卒・車騎は中に居る。陳 畢はらば徐ろに行き、慎みて驚駭すること無かれ。武衝扶胥を以て、前後に拒守し、武翼大櫓もて以て左右に備ふ。敵人 若し驚かば、勇力冒将の士 疾かに撃ちて前み、弱卒・車騎は以て其の後に属く。材士・強弩は隠れ伏して処る。審らかに敵人の我を追ふを候ひ、伏兵 疾かに其の後を撃つ。其の火鼓を多くし、地より出づるが若く、天より下るが若くせば、三軍 勇闘し、我を能く禦ぐもの莫し」と。武王曰く、「前に大水・広塹・深坑有り、我 踰え渡らんと欲するも、舟楫の備へ無し。敵人 塁に屯し、我が軍の前を限り、我が帰道を塞ぐ。斥候は常に戒め、険塞 尽く中たり、車騎は我が前を要し、勇士は我が後を撃つ。之を為すこと奈何」と。太公曰く、「大水・広塹・深坑は、敵人の守らざる所なり。或いは能く之を守るとも、其の卒は必ず寡なし。此くの若き者は、飛江・転関と天潢とを以て吾が軍を済らしむ。勇力・材士は、我が指す所に従ひ、敵を衝きて陳を絶ち、皆 其の死を致さしむ。先づ吾が輜重を燔き、吾が糧食を焼き、明らかに吏士に告ぐ、勇み闘へば則ち生き、勇まざれば則ち死す、と。已に出でたる者には、我が踵軍をして雲火・遠候を設けしめ、必ず草木・丘墓・険阻に依らしむ。敵人の車騎は、必ず敢へて遠く追ひ長駆せざらん。因りて火を以て記と為し、先づ出でたる者は、火に至りて止まらしめ、四武衝陳を為さしむ。此くの如くんば、則ち吾が三軍は皆 精鋭にして勇闘し、我を能く止むるもの莫し」と。武王曰く、「善いかな」と。
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