大祓詞 / 罪と云ふ罪は在らじ
如此気吹放ては 根国底之国に坐す速佐須良比咩と云神 持さすらひ失てむ 如此失てば 今日より始て罪と云ふ罪は不在と 高天原に耳振立聞物と馬牽立て 今年の六月の晦日の 夕日之降の大祓に 祓給ひ清給ふ事を 諸聞食せと宣る 四国の卜部等 大川道に持退出て祓却と宣る
書き下し
かく気吹き放ちては、根の国・底の国に坐す速佐須良比咩という神、持ちさすらい失いてむ。かく失いてば、今日より始めて罪という罪は在らじと、高天原に耳振り立てて聞くものと馬牽き立てて、今年の六月の晦日の、夕日の降ちの大祓に、祓い給い清め給う事を、諸々聞こし召せと宣る。四つの国の卜部ら、大川道に持ち罷り出でて祓い却れと宣る。
現代語訳
こうして息で吹き放ったなら、根の国・底の国にいます速佐須良比咩という神が、それを持ってさすらい、失わせてしまうだろう。こうして失われたなら、今日より始めて罪という罪は無いと、高天原に耳を振り立てて聞くものとして馬を牽き立て、今年の六月晦日の、夕日の傾く頃の大祓に、祓い清めることを、皆々よく聞きなさいと宣る。四つの国の卜部たちよ、大川の道へ持ち出して祓い捨てよ、と宣る。
解説
罪の行方が、四番目の神で終わる。速佐須良比咩が持ってさすらい、失わせる。消滅ではなく、行方が分からなくなるという言い方をしているのが独特である。そして「今日より始めて罪という罪は在らじ」——今日からやり直しだ、と宣言される。半年に一度、全員が同じ日にここへ立ち返る。最後は実務に戻る。四つの国の卜部たちが、祓った証を大川へ持ち出して流せ、と命じられて詞は終わる。祈りの言葉が、具体的な誰かへの具体的な指示で閉じられている。読み上げて終わりではなく、必ず動作が伴うようにできている。
この章句が説くこと
速佐須良比咩今日より始めて卜部大川道