大祓詞 / 天津罪
如此依さし奉し四方の国中と 大倭日高見之国を安国と定奉て 下津磐根に宮柱太敷立て 高天原に千木高知て 皇御孫之命の美頭の御舎仕奉て 天之御蔭日之御蔭と隠坐て 安国と平けく所知食む国中に成出む 天の益人等が 過犯けむ雑々の罪事は 天津罪と 畦放 溝埋 樋放 頻蒔 串刺 生剥 逆剥 屎戸 ここだくの罪を 天津罪と法別て
書き下し
かく依さし奉りし四方の国中と、大倭日高見の国を安国と定め奉りて、下つ磐根に宮柱太敷き立て、高天原に千木高知りて、皇御孫の命の瑞の御殿仕え奉りて、天の御蔭・日の御蔭と隠り坐して、安国と平らけく知ろし召さむ国中に成り出でむ、天の益人らが、過ち犯しけむ種々の罪事は。天つ罪と、畦放ち、溝埋め、樋放ち、頻蒔き、串刺し、生剥ぎ、逆剥ぎ、屎戸、ここだくの罪を、天つ罪と法り別けて。
現代語訳
こうして委ねられた四方の国々と、大倭日高見の国を安らかな国と定め、地の底の岩根に宮柱を太く立て、高天原に千木を高くそびえさせて、皇御孫の命の御殿をお造りし、天の御蔭・日の御蔭としてお隠れになり、安らかな国として平らかに治められる、その国の中に生まれ出てくる人々が、過って犯したであろうさまざまな罪——それは、天つ罪として、畦を壊す、溝を埋める、樋を外す、種を重ねて蒔く、串を刺す、生きたまま皮を剥ぐ、逆さに剥ぐ、屎を撒く。これらの数々の罪を、天つ罪と定め分けて。
解説
天つ罪として並ぶのは、ほとんどが田を壊す行いである。畦を壊す、溝を埋める、樋を外す——いずれも水を分ける仕組みへの破壊だ。稲作は水路を共有しなければ成り立たない。だから共有の仕組みを壊すことが、最も重い罪として名指しされている。頻蒔き(人の田に重ねて種を蒔き所有を争う)も同じ系統である。個人の被害というより、共同で使う基盤を毀損する行いが罪の原型に置かれた。なお、この後に続く「国津罪」の列挙には、今日の人権感覚では到底受け入れられない、身体的特徴や病を罪に数える項目が含まれる。古代の罪の観念をそのまま伝える資料としての価値はあるが、章句としては採っていない。
この章句が説くこと
天つ罪畦放ち溝埋め宮柱太敷き立て天の益人
関連する章句
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『大祓詞』太祝詞事を宣れかく出でば、天つ宮事もちて、大中臣、天つ金木を本打ち切り末打ち断ちて、千座の置座に置き足らわして、天つ菅曾を本刈り断ち末刈り切りて、八針に取り裂きて、天つ祝詞の太祝詞事を宣れ。
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『大祓詞』罪と云ふ罪は在らじかく気吹き放ちては、根の国・底の国に坐す速佐須良比咩という神、持ちさすらい失いてむ。かく失いてば、今日より始めて罪という罪は在らじと、高天原に耳振り立てて聞くものと馬牽き立てて、今年の六月の晦日の、夕日の降ちの大祓に、祓い給い清め給う事を、諸々聞こし召せと宣る。四つの国の卜部ら、大川道に持ち罷り出でて祓い却れと宣る。
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『大祓詞』天つ神国つ神かく宣らば、天つ神は天の磐門を押し披きて、天の八重雲を伊頭の千別きに千別きて聞こし召さむ。国つ神は高山の末・短山の末に登り坐して、高山の伊穂理・短山の伊穂理を掻き別けて聞こし召さむ。
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『大祓詞』科戸の風の吹き放つ事の如くかく聞こし召してば、皇御孫の命の朝廷を始めて、天の下四方の国には、罪という罪は在らじと、科戸の風の天の八重雲を吹き放つ事の如く、朝の御霧・夕の御霧を朝風・夕風の吹き掃う事の如く、大津辺に居る大船を、舳解き放ち艫解き放ちて大海原に押し放つ事の如く、彼方の繁木が本を焼鎌の敏鎌もちて打ち掃う事の如く、遺る罪は在らじと、祓い給い清め給う事を、高山の末・短山の末より、佐久那太理に落ち多岐つ速川の瀬に坐す瀬織津比咩という神、大海原に持ち出でなむ。かく持ち出で往なば、荒潮の潮の八百道の八潮道の潮の八百会に坐す速開都比咩という神、持ちかか呑みてむ。かくかか呑みては、気吹戸に坐す気吹戸主という神、根の国・底の国に気吹き放ちてむ。
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『大祓詞』神議に議り賜ひて高天原に神留まり坐す、皇親神漏岐・神漏美の命もちて、八百万の神たちを、神集えに集え給い、神議りに議り給いて、我が皇孫の尊は、豊葦原の水穂の国を、安国と平らけく知ろし召せと事依さし奉りき。
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『大祓詞』諸聞食せと宣るうごなわれる親王たち、諸王たち、諸臣たち、百官の人たち、諸々聞こし召せと宣る。天皇が朝廷に仕え奉る、比礼掛くる伴の男、手襁掛くる伴の男、靫負う伴の男、剣佩く伴の男、伴の男の八十伴の男を始めて、官々に仕え奉る人どもの、過ち犯しけむ種々の罪を、今年の六月の晦の大祓に、祓い給い清め給うことを、諸々聞こし召せと宣る。

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