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孟子 / 離婁章句下

齊人有一妻一妾而處室者。其良人出、則必饜酒肉而後反。其妻問所與飲食者、則盡富貴也。其妻告其妾曰、良人出、則必饜酒肉而後反。問其與飲食者、盡富貴也。而未嘗有顯者來。吾將瞷良人之所之也。蚤起、施從良人之所之。遍國中無與立談者。卒之東郭墦閒之祭者、乞其餘。不足、又顧而之他。此其為饜足之道也。其妻歸、告其妾曰、良人者、所仰望而終身也。今若此。與其妾訕其良人、而相泣於中庭。而良人未之知也。施施從外來、驕其妻妾。由君子觀之、則人之所以求富貴利達者、其妻妾不羞也、而不相泣者、幾希矣。

新字:斉人有一妻一妾而処室者。其良人出、則必饜酒肉而後反。其妻問所与飲食者、則尽富貴也。其妻告其妾曰、良人出、則必饜酒肉而後反。問其与飲食者、尽富貴也。而未嘗有顕者来。吾将瞷良人之所之也。蚤起、施従良人之所之。遍国中無与立談者。卒之東郭墦閒之祭者、乞其余。不足、又顧而之他。此其為饜足之道也。其妻歸、告其妾曰、良人者、所仰望而終身也。今若此。与其妾訕其良人、而相泣於中庭。而良人未之知也。施施従外来、驕其妻妾。由君子観之、則人之所以求富貴利達者、其妻妾不羞也、而不相泣者、幾希矣。

書き下し

齊人、一妻一妾にして、室に處る者有り。其の良人出づれば、則ち必ず酒肉に饜きて、而る後に反る。其の妻、與に飲食する所の者を問えば、則ち盡く富貴なり。其の妻、其の妾に告げて曰く、「良人出づれば、則ち必ず酒肉に饜きて、而る後に反る。其の與に飲食する者を問えば、盡く富貴なり。而も未だ嘗て顯者の來たること有らず。吾將に良人の之く所を瞷わんとす。」蚤に起き、施めに良人の之く所に從う。國中を遍くするも、與に立って談ずる者無し。卒に東郭墦閒の祭る者に之きて、其の餘りを乞う。足らざれば、又顧みて他に之く。此れ其の饜足を為すの道なり。其の妻歸り、其の妾に告げて曰く、「良人なる者は、仰ぎ望みて身を終うる所なり。今此の若し。」其の妾と與に其の良人を訕(そしる)りて、中庭に相泣く。而るに良人は未だ之を知らざるなり。施施として外從り來たり、其の妻妾に驕れり。君子由り之を觀れば、則ち人の富貴利達を求むる所以の者、其の妻妾羞ぢず、而も相泣かざる者は、幾んど希なり。

現代語訳

齊の人で、妻と妾一人を持って、家でぶらぶらしている男がいた。その男は外出すると、必ず肉や酒をたらふく飲み食いして帰ってくる。妻が誰と一緒に飲食したのか尋ねると、相手は全て富者や貴人ばかりである。そこで妻は妾に言った。 「主人は外出すれば、必ず酒や肉をたらふく食べて帰ってきます。誰と一緒に飲食したのか尋ねると、相手は全て富者や貴人ばかりなのです。ところが今まで我が家にそのような人が尋ねてきたことがありません。どうも変なので、私は主人の跡をつけてみようと思います。」 妻は、翌日、朝早く起きて、夫の後を見え隠れにつけていった。ところが町中を歩き回っても、立ち止まって夫に話しかける人は一人もいなかった。やがて東の郊外の墓地まで行き、墓前で祭をしている者の所へ行き、余り物を乞い、足りなければ、あたりを見回して祭をしている者をさがして、又余り物を乞うのであった。これが夫のたらふく食らう道であった。妻は家に戻り、妾に、 「夫とは、女が一生涯尊敬してお仕えすべき方なのに、それがこんな有様では。」 と言って、二人して恨み言を言い、中庭で共に涙を流した。ところが夫はそんなことは露ほどにも知らず、いつも通りに誇らしげに帰ってきて、妻や妾に自慢した。この話について孟子は言った。 「君子から見れば、世の人が富貴を求め、利潤や栄達を求めるやり方は、もし妻妾が知れば、恥ずかしく思い、共に泣かない者は、ほとんどいないだろう。」

解説

見栄を張り、外では恥ずべき行動をとりながら、身内には威張る人間の滑稽さと浅ましさを説いています。現代でも、SNSで必要以上に自分を良く見せようとしたり、不正な手段で利益を得ながら周囲に自慢したりするケースが見受けられます。真の豊かさや成功とは、身近な家族や大切な人に対して胸を張って語れる、誠実で透明性のある生き方から生まれます。他人の目よりも、自分自身の良心に恥じない生き方を選ぶことが重要です。

この一句を、あなたの毎日に。

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