孟子 / 離婁章句下
孟子曰、以善服人者、未有能服人者也。以善養人、然後能服天下。天下不心服而王者、未之有也。
書き下し
孟子曰く、「善を以て人を服する者は、未だ能く人を服する者有らざるなり。善を以て人を養いて、然る後能く天下を服す。天下、心服せずして王たる者は、未だ之れ有らざるなり。」
現代語訳
孟子は言った。 「己の善を人に押し付けて人を服従させることは決してできない。自ら善を行い、その仁愛を天下に及ぼして、始めて天下の人々は心服するのである。人々の心服を得ないで、天下の王者となった者は、今までに例がない。」
解説
権力や理屈、自分の善意を押し付けて他人を従わせようとしても、人は心から納得しません。本当に人を動かすのは、自らが良い行いを実践し、周囲に思いやりや愛情を注ぐ姿勢です。リーダーシップにおいても、力で押さえつけるのではなく、相手を育み、安心感を与えることで初めて、チーム全体が自発的についてくるようになります。
この章句が説くこと
仁愛心服リーダーシップ善行
関連する章句
-
老子・第38章上徳は徳とせず、是を以て徳有り。下徳は徳を失わざらんとす、是を以て徳無し。上徳は無為にして而も以て為すこと無し。下徳は之を為して而も以て為すこと有り。上仁は之を為して而も以て為すこと無し。上義は之を為して而も以て為すこと有り。上礼は之を為して而も之に応ずる莫ければ、則ち臂を攘げて之を扔く。故に道を失いて而る後に徳、徳を失いて而る後に仁、仁を失いて而る後に義、義を失いて而る後に礼。夫れ礼は忠信の薄きにして、乱の首なり。前識は道の華にして、愚の始めなり。是を以て大丈夫は其の厚きに処りて、其の薄きに居らず。其の実に処りて、其の華に居らず。故に彼を去りて此を取る。
-
論語・衛霊公篇子曰わく、過ちて改めざる、これを過ちという。
-
論語・泰伯篇子曰く、恭にして礼無ければ則ち労す。慎にして礼無ければ則ち葸る。勇にして礼無ければ則ち乱る。直にして礼無ければ則ち絞す。君子親に篤ければ、則ち民仁に興る。故旧遺れざれば、則ち民偸からず。
-
論語・泰伯篇子曰く、『巍々(ぎぎ)たるかな、舜・禹の天下を有つや、而(しか)も与(あずか)らず。』
-
論語・郷党篇食は精を厭わず、膾は細きを厭わず。食の饐して餲せると、魚の餒れて肉の敗れたるとは、食らわず。色悪しきは食らわず、臭悪しきは食らわず。飪を失えるは食らわず、時ならざるは食らわず。割正しからざるは食らわず、其の醬を得ざれば食らわず。肉は多しと雖も、食気に勝たしめず。唯だ酒は量無きも、乱に及ばず。沽える酒と市える脯とは食らわず。薑を撤てて食らい、多くは食らわず。公に祭れば、肉を宿さず。祭肉は三日を出ださず。三日を出ずれば、之を食らわず。食らうに語らず、寝ぬるに言わず。疏食菜羹瓜と雖も祭れば、必ず斉如たり。
-
老子・第67章天下は皆な我が道を大にして不肖に似たりと謂う。夫れ唯だ大なり、故に不肖に似たり。若し肖ならば、久しいかな其の細なるや。我れに三宝有り、持して之を保つ。一に曰く慈、二に曰く倹、三に曰く敢えて天下の先と為らず。慈なる故に能く勇なり、倹なる故に能く広し、敢えて天下の先と為らざる故に能く器の長を成す。今、慈を舎てて且つ勇に、倹を舎てて且つ広に、後るるを舎てて且つ先んぜば、死せん。夫れ慈は、以て戦えば則ち勝ち、以て守れば則ち固し。天将に之を救わんとし、慈を以て之を衛る。