荀子 / 大略篇
虞舜、孝己孝而親不愛,比干、子胥忠而君不用,仲尼、顏淵知而窮於世。劫迫於暴國而無所辟之,則崇其善,揚其美,言其所長,而不稱其所短也。
新字:虞舜、孝己孝而親不愛,比干、子胥忠而君不用,仲尼、顔淵知而窮於世。劫迫於暴国而無所辟之,則崇其善,揚其美,言其所長,而不称其所短也。
書き下し
虞舜(ぐしゅん)・孝己(こうき)は孝なれども親愛せず。比干(ひかん)・子胥(ししょ)は忠なれども君用ゐず。仲尼(ちゅうじ)・顔淵(がんえん)は知なれども世に窮す。暴国に劫迫(きょうはく)せられて之を辟(さ)くる所無ければ、則ち其の善を崇(たっと)び、其の美を揚げ、其の長ずる所を言ひて、其の短なる所を称せざるなり。
現代語訳
虞舜と孝己は孝行であったのに、親から愛されなかった。比干と伍子胥は忠義であったのに、君主に用いられなかった。孔子と顔淵は知恵があったのに、世に容れられず行き詰まった。暴虐な国に脅かされ、そこから逃れるすべがないときには、その国の善い点を尊び、美点をたたえ、長所を言って、短所は口にしないのである。
解説
前半は、徳があっても報われるとはかぎらないという、荀子の冷静な現実認識です。舜も孝己も孝行を尽くしながら親に愛されず、比干も伍子胥も忠義を貫きながら用いられず、孔子と顔淵ほどの知者でさえ世に容れられなかった。正しさが必ず評価される、という甘い見通しをここで断ち切ります。後半はさらに現実的で、暴虐な国に囲まれて逃げ場がないなら、相手の長所を言い、短所は口にするな、と説きます。これは阿諛追従の勧めではなく、身を全うするための知恵です。理不尽な状況で正論をぶつけて潰されるより、まず生き延びて時を待つ。報われないことは起こりうるという前提を持ちつつ、それでも徳を捨てず、危機のなかでは無用な衝突を避けて自分を守る。厳しい環境に身を置く人ほど、心に留めておきたい教えです。
この章句が説くこと
徳と不遇比干身を全うする知恵現実主義忠臣
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