荀子 / 大略篇
天下之人,唯各特意哉,然而有所共予也。言味者予易牙,言音者予師曠,言治者予三王。三王既以定法度,制禮樂而傳之,有不用而改自作,何以異於變易牙之和,更師曠之律?無三王之法,天下不待亡,國不待死。
新字:天下之人,唯各特意哉,然而有所共予也。言味者予易牙,言音者予師曠,言治者予三王。三王既以定法度,制礼楽而伝之,有不用而改自作,何以異於変易牙之和,更師曠之律?無三王之法,天下不待亡,国不待死。
書き下し
天下の人、唯(た)だ各々意を特(こと)にするかな。然り而して共に予(ゆる)す所有るなり。味を言ふ者は易牙(えきが)に予し、音を言ふ者は師曠(しこう)に予し、治を言ふ者は三王に予す。三王既に以て法度を定め、礼楽を制して之を伝ふ。用ゐずして改め自ら作る有らば、何を以て易牙の和を変じ、師曠の律を更(あらた)むるに異ならんや。三王の法無ければ、天下は亡ぶるを待たず、国は死するを待たず。
現代語訳
世の中の人は、それぞれに考えが異なるものだ。それでも、皆が一致して認めるものはある。味について語る者は易牙の舌を認め、音楽について語る者は師曠の耳を認め、政治について語る者は三王のやり方を認める。三王はすでに法度を定め、礼楽を制定して後世に伝えた。それを用いずに勝手に改め、自分流のものを作る者がいたとしたら、易牙の味つけを変え、師曠の音律を作り直すのと何の違いがあろうか。三王の法がなければ、天下はほどなく滅び、国はまたたく間に亡びる。
解説
人はそれぞれ意見が違う。それでも、この分野ならこの人だ、と誰もが認める基準はある——荀子はそこから話を始めます。味なら易牙、音楽なら師曠、そして政治なら三王。この道の達人が定めた基準を、素人が思いつきで作り替えたらどうなるか。名料理人の味つけを勝手にいじり、名楽人の音律を作り直すのと同じで、ただ台無しにするだけだ、と言うのです。荀子が守ろうとしているのは、長い時間をかけて練り上げられ、後世に伝えられてきた型の価値です。もちろん改良は必要ですが、それは型を身につけた上でのことです。私たちの仕事でも、先人が積み上げた手順や作法を、面倒だからと自己流に崩してしまうことがあります。まず型を使いこなす。改めるのは、その理由が分かってからで遅くありません。
この章句が説くこと
三王の法易牙師曠型を尊ぶ
関連する章句
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荀子・非相篇辨は分より大なるは莫く、分は礼より大なるは莫く、礼は聖王より大なるは莫し。聖王は百有り、吾れ孰(いず)れに法(のっと)らん。故に曰く、文は久しくして滅し、節族(せっそう)は久しくして絶ゆ、法数を守るの有司も、礼を極めて褫(うば)わる、と。故に曰く、聖王の跡を観んと欲せば、則ち其の粲然(さんぜん)たる者に於いてせよ、後王是れなり、と。彼の後王なる者は、天下の君なり。後王を舎(す)てて上古を道(い)うは、之を譬うるに是れ猶お己の君を舎てて人の君に事(つか)うるがごときなり。故に曰く、千歳を観んと欲せば、則ち今日を数えよ。億万を知らんと欲せば、則ち一二を審(つまび)らかにせよ。上世を知らんと欲せば、則ち周道を審らかにせよ。周道を審らかにせんと欲せば、則ち其の人の貴ぶ所の君子を審らかにせよ、と。故に曰く、近きを以て遠きを知り、一を以て万を知り、微を以て明を知る、と。此れの謂いなり。
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荀子・王覇篇国として治法有らざるは無く、国として乱法有らざるは無し。国として賢士有らざるは無く、国として罷士有らざるは無し。国として愿民有らざるは無く、国として悍民有らざるは無し。国として美俗有らざるは無く、国として悪俗有らざるは無し。両者並び行われて国在り。上に偏すれば国安く、下に偏すれば国危うし。上に一なれば王たり、下に一なれば亡ぶ。故に其の法治まり、其の佐賢に、其の民愿に、其の俗美にして、四者斉しき、夫れ是れを之れ上に一なりと謂う。是くの如くんば則ち戦わずして勝ち、攻めずして得、甲兵労せずして天下服す。故に湯は亳を以てし、文王は鄗を以てし、皆な百里の地なるも、天下を一と為し、諸侯を臣と為し、通達の属、従服せざるは莫し。它の故無し、四者斉しければなり。桀・紂は即ち天下の埶を有つに厚きも、匹夫たらんことを索めて得べからざるなり。是れ它の故無し、四者並びに亡べばなり。故に百王の法は同じからざるも、是くの若く帰する所は一なり。
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