荀子 / 大略篇
曾子食魚,有餘,曰:「泔之。」門人曰:「泔之傷人,不若奧之。」曾子泣涕曰:「有異心乎哉!」傷其聞之晚也。
新字:曽子食魚,有余,曰:「泔之。」門人曰:「泔之傷人,不若奥之。」曽子泣涕曰:「有異心乎哉!」傷其聞之晩也。
書き下し
曾子(そうし)魚を食らひ、余り有り。曰く、「之を泔(かん)せよ」と。門人曰く、「之を泔すれば人を傷(そこな)ふ。之を奧(いく)するに若(し)かず」と。曾子涕(なみだ)を泣(なが)して曰く、「異心有らんや」と。其の之を聞くことの晩(おそ)きを傷(いた)めるなり。
現代語訳
曾子が魚を食べたところ、食べ残しが出た。曾子は「これは水に浸して取っておきなさい」と言った。門人が言った。「水に浸しておくと、傷んで人の体をそこないます。火であぶって取っておくほうがよいでしょう」。曾子は涙を流して言った。「私に他意などあろうか」。そう言って、そのことを教わるのがこれほど遅かったことを、深く悼んだのである。
解説
孔子門下の高弟である曾子が、弟子から食べ物の扱いを訂正され、涙を流したという場面です。注目したいのは、曾子が反発しなかったこと、そして「私に他意はない」とわざわざ口にしたことです。年長者が指摘されて涙を見せれば、弟子は自分の忠告が気に障ったのかと不安になります。それを察して、恨んでいるのではないと先に伝えているのです。では何を悼んだのか。こんな大切なことを、この年になるまで知らずにいた、もっと早く聞いていればという悔しさです。地位も年齢も十分な人が、正しい指摘を素直に受け取り、しかも学ぶのが遅れたことを本気で悔やむ。この姿勢こそ学び続ける人の姿です。年下や後輩からの指摘を、素直に受け取れているでしょうか。