荀子 / 大略篇
藍苴路作,似知而非。懦弱易奪,似仁而非。悍戇好鬥,似勇而非。
書き下し
藍苴路作(らんしょろさく)は、知に似て而(しか)も非なり。懦弱(だじゃく)にして奪はれ易きは、仁に似て而も非なり。悍戇(かんとう)にして闘ひを好むは、勇に似て而も非なり。
現代語訳
うわべだけ体裁を取りつくろった粗雑なやり方は、知恵があるように見えて、知恵ではない。気が弱くて人に意志を奪われやすいのは、思いやりがあるように見えて、仁ではない。荒々しく無分別で争いを好むのは、勇ましく見えて、勇ではない。
解説
よく似ているが本物ではないもの、いわゆる似而非(えせ)を三つ並べた一段です。小手先の器用さは知恵に見え、断れない気の弱さは優しさに見え、粗暴さは勇気に見える。しかしどれも中身が違います。知恵とは道理を見通す力であって、その場をしのぐ小細工ではありません。仁とは相手のためを思う積極的な働きであって、押し切られて言いなりになることではありません。勇とは正しいことのために踏み出す力であって、腹立ちまぎれに突っかかることではありません。この見分けは、他人を評価するときだけでなく、自分を点検するときにこそ効きます。優しいつもりで、ただ嫌われるのを恐れて流されていないか。勇気のつもりで、ただ気が短いだけになっていないか。似ているものほど、意識して区別する必要があります。