荀子 / 大略篇
君子也者而好之,其人也;其人而不教,不祥。非君子而好之,非其人也;非其人而教之,齎盜糧,借賊兵也。
新字:君子也者而好之,其人也;其人而不教,不祥。非君子而好之,非其人也;非其人而教之,齎盗糧,借賊兵也。
書き下し
君子なる者にして之を好むは、其の人なり。其の人にして教へざるは、不祥なり。君子に非ずして之を好むは、其の人に非ざるなり。其の人に非ずして之を教ふるは、盗に糧を齎(もたら)し、賊に兵(へい)を借すなり。
現代語訳
君子たるにふさわしい人物であって、なおかつ学問を好む者は、教えるにふさわしい相手である。そのような相手なのに教えないのは、不吉なこと、よくないことである。君子たる資質がないのに学問を好む者は、教えるにふさわしい相手ではない。ふさわしくない者に教えるのは、盗人に食糧を与え、賊に武器を貸してやるようなものである。
解説
教えるという行為には相手を選ぶ責任がともなう、という厳しい一段です。学ぼうとする意欲があること自体は、必ずしも教えてよい理由になりません。人柄の土台があって学問を好む者なら、惜しまず教えるべきであり、教えないのは罪に近い。しかし土台のない者に力を与えれば、それは盗人に食糧を渡し、賊に武器を貸すのと同じで、学んだ知恵は人を害する道具になってしまう。荀子は知識や弁舌そのものを善とは見ず、それを使う人間の性根によって毒にも薬にもなると考えました。私たちも、ノウハウや情報を人に渡すとき、この人はそれを何に使うのかを一度考える必要があります。教えること、力を与えることは、結果に対する責任を分け持つことでもあるのです。