荀子 / 大略篇
君子進則益上之譽,而損下之憂。不能而居之,誣也;無益而厚受之,竊也。學者非必為仕,而仕者必如學。
新字:君子進則益上之誉,而損下之憂。不能而居之,誣也;無益而厚受之,竊也。學者非必為仕,而仕者必如學。
書き下し
君子進めば則ち上の誉れを益し、而して下の憂ひを損(へら)す。能はずして之に居るは、誣(し)ふるなり。益無くして厚く受くるは、竊(ぬす)むなり。学ぶ者は必ずしも仕ふるが為ならず、而れども仕ふる者は必ず学ぶが如くす。
現代語訳
君子が官職に就いて世に進めば、上に立つ君主の名誉を増し、下にいる民の憂いを減らす。実力もないのにその地位に居座るのは、人をあざむくことである。何の役にも立たないのに厚い俸禄を受け取るのは、盗みである。学ぶ者は必ずしも仕官のために学ぶわけではないが、仕官する者は必ず学び続ける者のようでなければならない。
解説
地位と実力の関係を、きわめて厳しい言葉で切っています。有能な人が要職に就けば、上は評価を高め、下は苦しみが減る。つまり役職とは、上下双方に利益を生むためにあるものだという前提です。だからこそ、力がないのに座っているのは「誣(あざむき)」であり、成果を出さずに高い報酬を得るのは「竊(ぬすみ)」だと断じます。後半の一句も味わい深く、学問そのものは出世の手段ではないが、責任ある立場に就いた者は必ず学び続けなければならない、と釘を刺します。役職は学びを終える資格ではなく、学び続ける義務なのです。肩書きが上がったときこそ、自分の実力が肩書きに追いついているかを点検し、インプットを止めないでいたいものです。