荀子 / 大略篇
君子疑則不言,未問則不言,道遠日益矣。
書き下し
君子は疑はしければ則ち言はず、未(いま)だ問はれざれば則ち言はず、道遠くして日に益(ま)すなり。
現代語訳
君子は、確かでないことは口にせず、まだ問われてもいないことは口にしない。道ははるかに遠く、学ぶべきことは日ごとに増していくのだから。
解説
口を開かないことにも作法がある、という一段です。確かでないことは言わない。まだ問われていないことは言わない。この二つを君子の掟としたうえで、その理由を「道遠くして日に益す」と締めくくります。学ぶべき道はまだはるかに遠く、知らねばならないことは日々増えていく。つまり、自分はまだ途上にいるのだから、軽々しく断定して回るような立場ではない、という自覚です。逆に言えば、確信もないのに語り、聞かれてもいないのに助言する人は、自分をもう完成品だと思っているということになります。いまは誰もが発信できる時代で、確からしさが不十分なまま言葉を出すことのコストが、かつてなく下がっています。だからこそ、この二つの沈黙は現代でこそ価値を持ちます。黙るのは自信のなさではなく、道の遠さを知っている証なのです。
この章句が説くこと
沈黙の作法断定を避ける道はなお遠し発言の慎み謙虚率先垂範
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