荀子 / 大略篇
不富無以養民情,不教無以理民性。故家五畝宅,百畝田,務其業,而勿奪其時,所以富之也。立大學,設庠序,修六禮,明七教,所以道之也。《詩》曰:「飲之食之,教之誨之。」王事具矣。
新字:不富無以養民情,不教無以理民性。故家五畝宅,百畝田,務其業,而勿奪其時,所以富之也。立大学,設庠序,修六礼,明七教,所以道之也。《詩》曰:「飲之食之,教之誨之。」王事具矣。
書き下し
富まさざれば以て民の情を養ふ無く、教へざれば以て民の性を理むる無し。故に家ごとに五畝の宅、百畝の田あらしめ、其の業に務めしめて、其の時を奪ふこと勿きは、之を富ます所以なり。大学を立て、庠序を設け、六礼を修め、七教を明らかにするは、之を道く所以なり。詩に曰く、「之に飲ましめ之に食らはしめ、之を教へ之を誨ふ」と。王事具はれり。
現代語訳
民を富ませなければ、その情を養うことはできない。民を教えなければ、その性を治め整えることはできない。だから家ごとに五畝の宅地と百畝の田を与え、その生業に励ませ、農作業の時期を公役で奪わないようにする。これが民を富ませる方法である。大学を建て、地方の学校を設け、六礼を整え、七教を明らかにする。これが民を導く方法である。詩に「これに飲ませ、これに食べさせ、これを教え、これを諭す」とある。王者のなすべき事業は、これで備わるのである。
解説
政治の要諦を、富ませることと教えることの二本柱にまとめた一段です。まず暮らしを立ち行かせる。宅地と田を与え、生業に打ち込ませ、農繁期に労役で時間を奪わない。荀子はこの最後の一点を強調します。与えるだけでなく、邪魔をしないことが大事なのです。そのうえで学校を建て、礼と教えを明らかにして人を導く。順序が重要で、腹が満ちなければ心を養う余裕は生まれず、教えがなければ豊かさは人を堕落させます。引かれた詩の一句も、飲ませ食べさせ、そのうえで教え諭す、という同じ順番を示しています。組織運営にもそのまま通じるでしょう。待遇を整え、余計な負担で時間を奪わず、そのうえで学びの機会を用意する。この両輪が揃ってはじめて人は育ちます。
この章句が説くこと
民を富ませる教育の制度時を奪わない王者の事業順序教育
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礼記・王制凡そ民を居くには、地を量りて以て邑を制し、地を度りて以て民を居く。地・邑・民居、必ず参(まじ)えて相得しむるなり。曠土(こうど)無く、游民無く、食節(せつ)あり事時あれば、民咸(みな)其の居に安んじ、事を楽しみ功に勧み、君を尊び上に親しむ。然る後に学を興す。
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『塩鉄論』授時篇賢良曰く、周公の成王に相たるや、百姓饒樂し、國に窮人無し、之に代わりて耕織せしに非ざるなり。其の田疇を易め、其の稅斂を薄くすれば、則ち民富む。上は以て君親に奉じ、下は饑寒の憂い無ければ、則ち教成るべし。語に曰く、『既に富めり、又た何をか加えん。曰く、之を教うと』。之を教うるに德を以てし、之を齊うるに禮を以てすれば、則ち民は義に徙りて善に從い、入りては孝、出でては悌ならざるは莫し、夫れ何ぞ奢侈暴慢の有らんや。管子曰く、『倉廩實ちて禮節を知り、百姓足りて榮辱を知る』と。故に富民は與に禮に適き易し。
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