荀子 / 大略篇
《易》曰:「復自道,何其咎?」春秋賢穆公,以為能變也。
新字:《易》曰:「復自道,何其咎?」春秋賢穆公,以為能変也。
書き下し
易に曰く、「道より復る、何ぞ其れ咎あらん」と。春秋は穆公を賢とす、以て能く変ずと為せばなり。
現代語訳
易に「正しい道へ立ち返るのだから、どうして咎めがあろうか」とある。春秋が穆公を賢者としているのは、彼が自分を改めることができたからである。
解説
過ちを改めることの価値を、易の言葉を引いて説いた一段です。引かれているのは、正しい道に立ち返るのだから咎めなどあるはずがない、という一句です。人はしばしば、いったん誤った道を進んでしまうと、引き返すのが恥ずかしくて意地を張ります。しかし易は、立ち返ることそのものに咎はないと言い切ります。そして荀子は、春秋がこの穆公を賢者として評価したのは、まさに彼が自分を変えることができたからだと述べます。賢さとは、はじめから間違えないことではなく、間違えたと気づいたときに向きを変えられることなのです。仕事でも同じでしょう。方針の誤りを認めて撤回するのは勇気が要りますが、それを先延ばしにするほど損失は膨らみます。引き返す決断こそ、評価に値する能力です。
この章句が説くこと
過ちを改める道に復る変わる力易の言葉
関連する章句
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易経・復卦遠からずして復るは、以て身を修むるなり。休く復るの吉は、以て仁に下るなり。頻りに復るの厲ふきは、義として咎无きなり。中行して独り復るは、以て道に従ふなり。敦く復りて悔无きは、中以て自ら考(な)すなり。復るに迷ふの凶は、君道に反すればなり。
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『五常訓』巻之四・義一善を見ては則ち遷り、過有れば則ち改む。此二句、易の益の卦の文なり。我が行ふ処悪しからざれども、人のいふ事、人の行ふ処、わが行ふ処より、まさりて善なるを見ば、即我が行へる事をば捨てて、少しなりとも優れる方に遷るべし。是を、善を見て即うつると云ふ。いまだ善き事と知らずば、すべきやう無し。既にすべき義と知りて行はざるは、力も無きことなり。是義を見てせざるは勇なき也。過あれば則改むとは、我が行あやまりあらば、即時に早く改むべし。猶予して、我がひが事をかざり、改むるに憚ることなかれ。義を見て遷るは、其工夫かろくして易し。過を改むるは、其工夫おもくして難し。十分に力を用ふべし。たとへばうす白き物を潔白にするは易し。黒き物を白くする事は難きが如し。此二は、即義にうつる道なり。是学問の道のつとむべき処、力行の要なり。
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『初学訓』巻之三一学問の道は、人倫の道を行ひ、人を憐み恵むを以てつとめとす、身を修むるを以て根本とす。身修らざれば、人倫の道行はれず。天下国家の法なくして治らず。身を修むるの道は、易に所謂、善を見ては則ち遷り、過有れば則ち改む、を以て要とし、わが身に省みて、人を責めざるをつとむ。人の善を見ても遷らず、わが過あれども改めず、是は、一向、道に志なき人なり。左伝に曰く、人聖人に非ず。誰か過無からん。過ちて能く改む。善焉より大なるは莫し。論語に曰く、過てば則ち改むるに憚ること勿れ。尚書に曰く、過を改むるに吝かならず。やぶさかとはをしむをいふ。過あらば、をしまずして速に改むべし。学問の道他なし、只、過を知りてよく改め、善にうつるをむねとすべし。学者、此事を以て、つねに心にかけてつとむべし。過を改めんとならば、まづ、わが過を知るべし。
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『大和俗訓』巻之六・躬行上一常に我が身をかへりみて、先我が過を知るべし。すでに過を知りなば、速かにあらたむべし。尚書に、過を改めて吝ならずといへり。吝とはをしむなり。あやまちを惜まずして、早く改むるを云ふ。孔子も、過つては則改むるに憚ることなかれとのたまへり。わが身の過を知らざるは愚なり。過を知りて改めざるは、即悪なり。知らずして過つより、猶その罪おもし。
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『大和俗訓』巻之三・心術上一古語に、人聖人にあらず、誰か過なからん。過まつてよく改む、善これより大なるはなしといへり。程子も、学問の道無他、其不善を知れば、速かに改めて善にしたがふのみといへり。不善とは、即過なり。過を知りて改むるは学間の要なり。されども我が過を知る人すくなし。すべて凡人は我が身に私して、其身の過と悪とを知らず、よろづの外の事は、事ごとに知らずとも、さほどのうれひにあらず。我が身の悪と過を知らざるは、はなはだ愚なるかな。是何よりも憂ふべき事ならずや。身をかへりみ、人の諫を聞きて我が過を知るべし。
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『慎思録』巻之四日に一日を慎めば、過ち無かるべし。然れども過ち有る者は、其の省察の未だ至らざると、究理の未だ精しからざるとに因るなり。夫子曰く、遠からずして復る。悔に祗ること無し、元吉なり、と。蓋し過ちを改むるは速やかなるを宜しとす。悔に祗らざる所以なり。一過すら既に甚だしと為す。既に其の過ちを知る、其れ豈に再び過つべけんや。顔子は過ちを弐びせず。此れ法と為すべし。衆人の頻りに復るが如きは、咎無しと雖も、厲くして悔多き所以なり。吾曹は慾多し。須らく堅忍して再び過つこと無かるべし。正に是れ学問の力を得る処なり。若し是の如くならざれば、以て学を為すに足らざるなり。
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