荀子 / 大略篇
禮者,以財物為用,以貴賤為文,以多少為異。
新字:礼者,以財物為用,以貴賤為文,以多少為異。
書き下し
礼とは、財物を以て用と為し、貴賤を以て文と為し、多少を以て異と為す。
現代語訳
礼は、財物を実際に用いる道具とし、身分の貴賤に応じて飾りの形を定め、供える物の多い少ないによって差をつける。
解説
礼を成り立たせている三つの要素を挙げた一段です。第一に財物、つまり儀礼には器や供物といった具体的な物が要るということ。第二に貴賤、すなわち身分に応じて飾り方や形式を変えること。第三に多少、供える物の量によって差を設けること。礼は心の問題だと語られがちですが、荀子はきわめて現実的です。物がなければ礼は行えず、差をつけなければ秩序は見えない。ただしこの差は、人を蔑むためのものではなく、それぞれの立場と役割を可視化するための仕組みでした。現代の私たちも、贈り物の格、案内状の体裁、席次といった形で、無意識にこの原理を使っています。物と形と量。この三つをどう配分するかに、相手への理解の深さが表れます。