荀子 / 大略篇
坐視膝,立視足,應對言語視面。立視前六尺而大之,六六三十六,三丈六尺。
新字:坐視膝,立視足,応対言語視面。立視前六尺而大之,六六三十六,三丈六尺。
書き下し
坐しては膝を視、立ちては足を視、応対言語には面を視る。立ちて前を視ること六尺にして之を大にすれば、六六三十六、三丈六尺なり。
現代語訳
座っているときは相手の膝のあたりに目をやり、立っているときは足元に目をやり、受け答えをして言葉を交わすときには相手の顔を見る。立っているときの視線は前方六尺までとし、それを広げていけば六かける六で三十六、すなわち三丈六尺の範囲となる。
解説
視線の置き方という、きわめて具体的な作法を説いた一段です。座しているときは膝、立っているときは足元、そして言葉を交わすときには相手の顔を見る。場面ごとに見るべき高さが定められています。じろじろ見つめるのでも、目をそらすのでもなく、その場にふさわしい距離を目線で保つということです。後半では視野の広さまで数で示されており、礼が抽象的な心構えではなく、身体の細部にまで及ぶ具体的な訓練であったことがうかがえます。私たちの日常でも、視線は驚くほど多くを伝えます。話しかけられているのに画面から目を離さない、逆に必要以上にじっと見つめる。どちらも相手に落ち着かなさを与えます。話すときは相手の顔を見る。この一点を守るだけでも、伝わる誠実さは変わってきます。