荀子 / 大略篇
禮者,人之所履也,失所履,必顛蹶陷溺。所失微而其為亂大者,禮也。
新字:礼者,人之所履也,失所履,必顛蹶陥溺。所失微而其為乱大者,礼也。
書き下し
礼とは、人の履む所なり。履む所を失へば、必ず顛蹶し陥溺す。失ふ所は微にして其の乱を為すこと大なる者は、礼なり。
現代語訳
礼とは、人が踏んで歩む足場である。その足場を踏み外せば、必ずつまずき倒れ、あるいは落ちて溺れる。失うものはごくわずかであるのに、それが引き起こす乱れはきわめて大きい。それが礼というものである。
解説
礼を、人が足を置く地面にたとえた一段です。歩いているときは足元を意識しませんが、一歩踏み外せばたちまち転び、あるいは水に落ちて溺れる。礼もそれと同じで、守れているうちはその存在に気づきにくく、崩れたときにはじめてその重さがわかるというのです。とりわけ印象的なのが後半で、失うものはほんのわずかなのに、そこから生じる乱れは途方もなく大きい、と述べられています。挨拶ひとつ、言い方ひとつ、順序ひとつ。取るに足らないように見える形の乱れが、信頼の崩壊や組織の混乱にまで連鎖していく。私たちの職場や家庭でも同じです。小さな礼を省く癖がついたときこそ危ない。足場は、崩れてから直すより、崩さないほうがずっと安上がりなのです。
この章句が説くこと
礼は人の足場小事が大乱を招く日常の作法秩序の基盤礼人情
関連する章句
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『五常訓』巻之四・礼一朱子曰、礼は即理の節文なり。いふ意は、万の行、道理にかなひて、過不及なく、程よきを云ふ。飲食の一事をいはば、うゑかわく時に飲み食ふは理なり。されども、飲み食ふべき理なりとて、みだりに多く飲み食へば、放逸にして、みだりがはしく、又必病を生ず。飲み食ふべき理にあたりて、過不及なく、よき程なるが、理の節文なり。万の事、是を以て知るべし。
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『弁名』禮礼は道の名なり。先王の制作する所の四教・六芸、是れ其の一に居る。所謂経礼三百、威儀三千、是れ其の物なり。六芸は、書・数は庶人の官に在る者、府・史・胥・徒の専ら務むる所と為す。御も亦た士の職とする所なり。射は諸侯に通ずと雖も、其の所謂射は、礼楽を以て之を行ふ、民の射の皮を主とする者の比に非ず。唯だ礼楽のみ乃ち芸の大なる者にして、君子の務むる所なり。而して楽は伶官に掌られ、君子以て徳を養ふのみ。礼に至りては則ち君子此を以て顕業と為す。是を以て孔子少くして礼を知るを以て称せられ、周に之きて礼を老聃に問ひ、杞に之き宋に之き、唯だ礼を之れ求む。子夏の記す所、曾子の問ふ所、七十子皆礼に断断たり。檀弓の諸篇に見ゆ。三代の君子の礼を務むる、以て見るべきのみ。
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