荀子 / 大略篇
易之咸,見夫婦。夫婦之道,不可不正也,君臣父子之本也。咸、感也,以高下下,以男下女,柔上而剛下。
書き下し
易の咸は、夫婦を見す。夫婦の道は、正しからざるべからざるなり、君臣父子の本なり。咸とは、感なり。高きを以て下に下り、男を以て女に下る。柔は上にして剛は下なり。
現代語訳
易の咸の卦は、夫婦のあり方を示している。夫婦の道は正しくあらねばならない。それが君臣や父子といった関係の根本だからである。咸とは感じ合うということである。高い位置にある者が低い位置にへりくだり、男が女にへりくだる。柔らかなものが上にあり、剛いものが下にある、という形である。
解説
易経の咸の卦を引いて、夫婦のあり方を説いた一段です。咸は感じ合うことを意味し、その卦は柔らかなものが上に、剛いものが下に配される形をしています。つまり、強い側が下にまわってへりくだることで、はじめて互いの心が通じ合うというのです。荀子はここで、夫婦の道こそが君臣や父子の関係の根本だと言い切ります。最も身近な二人の間に敬意と正しさが成り立たなければ、より大きな関係が整うはずもない、という考え方です。注目したいのは、感じ合うことが自然発生ではなく、へりくだるという能動的な姿勢から生まれるとされている点です。私たちも、近しい相手ほど遠慮がなくなりがちです。強い立場にある側が一歩下がる。その小さな譲りが、関係の質を決めていきます。
この章句が説くこと
易の咸の卦夫婦の道へりくだる感じ合う感応
関連する章句
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易経・彖伝咸(かん)は、感なり。柔上りて剛下り、二気感応して以て相与(あいあずか)る。止まりて説(よろこ)び、男女に下る。是を以て「亨る、貞しきに利ろし、女を取(めと)るに吉なり」なり。天地感じて万物化生し、聖人人心を感ぜしめて天下和平なり。其の感ずる所を観て、天地万物の情見るべし。
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易経・咸卦周易 第三十一卦。艮下兌上。易経。咸は、亨る。貞しきに利ろし。女を取れば吉。初六、其の拇に咸ず。六二、其の腓に咸ず、凶、居れば吉。九三、其の股に咸ず、其の随うものを執る、往けば吝。九四、貞なれば吉にして悔い亡ぶ。憧憧として往来すれば、朋爾の思いに従う。九五、其の脢に咸ず、悔い无し。上六、其の輔頰舌に咸ず。彖に曰く、
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荀子・大略篇君臣は尊ばざるを得ず、父子は親しまざるを得ず、兄弟は順ならざるを得ず、夫婦は驩ばざるを得ず、少き者は以て長じ、老いたる者は以て養はる。故に天地は之を生じ、聖人は之を成す。
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易経・象伝山の上に澤有るは、咸(かん)なり。君子以て虛(きょ)にして人を受く。
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易経・咸卦其の拇に咸ずとは、志外に在るなり。凶なりと雖も、居れば吉とは、順えば害あらざるなり。其の股に咸ずとは、亦処らざるなり。志人に随うに在り、執る所下なり。貞なれば吉にして悔い亡ぶとは、未だ感じて害あらざるなり。憧憧として往来すとは、未だ光大ならざるなり。其の脢に咸ずとは、志末なり。其の輔頰舌に咸ずとは、口説を滕ぐるなり。
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