荀子 / 大略篇
吉事尚尊,喪事尚親。
書き下し
吉事には尊きを尚び、喪事には親しきを尚ぶ。
現代語訳
めでたい儀式では身分の高い者を上位に置き、葬儀の場では血縁の近い者を上位に置く。
解説
わずか十文字ほどですが、礼の使い分けの核心を突いた一句です。祝いごとの場では、その集まりの秩序を示すために身分や地位の高い者が上座につきます。しかし喪の場では基準が入れ替わり、亡くなった人とどれだけ近しかったか、つまり血縁の深さが優先されます。悲しみの中心にいる人こそがその場の中心だからです。荀子は、礼をどんな場面でも同じ形で当てはめる形式主義を退け、場の意味に応じて重んじる価値を切り替えるべきだと考えました。私たちの日常でも同じことが言えます。表彰や祝賀の席と、誰かを見送る席とでは、気を配るべき相手が違います。今この場で最も尊重されるべきは誰かを見誤らないこと。それが、心のこもった振る舞いの出発点になります。