荀子 / 大略篇
一命齒於鄉,再命齒於族,三命,族人雖七十不敢先。上大夫,中大夫,下大夫。
書き下し
一命は郷に歯し、再命は族に歯し、三命は、族人七十と雖も敢へて先んぜず。上大夫、中大夫、下大夫なり。
現代語訳
位を一度授かった者は、郷里の人々の中では年齢の順に従って席次につく。二度授かった者は、一族の中で年齢の順に従って席次につく。三度授かった者ともなれば、一族の者はたとえ七十歳の高齢であっても、あえてその人より上位に立とうとはしない。これが上大夫・中大夫・下大夫という位の違いである。
解説
位が上がるにつれて、序列の基準が「年齢」から「地位」へと移っていくことを説いた一段です。命とは君主から授かる官位の等級のことで、歯するとは年齢の順に席次を決めることを指します。位が低いうちは郷里でも一族でも年長者を立てるのが当然ですが、三度の任命を受けて重い責任を負うようになると、一族の長老でさえその人を上席に据える。これは個人を偉ぶらせるためではなく、公の職責には公の敬意を払うという原則の表れです。私たちの職場にも似た構図があります。年次や年齢の序列と、役割や責任に基づく序列は別物であり、どちらか一方だけで押し通すと関係がぎくしゃくします。場面ごとにどちらの物差しを使うのかを共有しておくことが、無用な摩擦を防ぐ知恵になります。