荀子 / 大略篇
大夫之臣,拜不稽首,非尊家臣也,所以辟君也。
新字:大夫之臣,拝不稽首,非尊家臣也,所以辟君也。
書き下し
大夫の臣は、拝して稽首せず。家臣を尊ぶに非ざるなり、君を辟くる所以なり。
現代語訳
大夫に仕える家臣は、主人に拝礼はしても稽首まではしない。それは家臣を高く扱っているからではなく、君主に対する礼と紛れないよう避けるためである。
解説
前段のお辞儀の話を受けて、その使い分けの理由を示した一段です。大夫に仕える家臣は、主人に対して拝礼はしても、より深い稽首まではしない。それは家臣を高く扱って遠慮させているのではなく、君主に対して尽くすべき最も深い礼と紛れてしまわないよう避けるためだ、と説明されます。つまり、最も深い礼をどこに向けるかを明確にしておくことが、秩序を保つということです。誰にでも同じ深さで頭を下げれば、一見丁寧に見えて、実は敬意の序列を曖昧にしてしまいます。礼は、しないことによっても意味を作るのです。組織の中でも、誰に最終的な決裁を仰ぐのか、どの筋を通すのかが曖昧になると、かえって混乱が生まれます。あえて一段控えるという判断が、全体の筋を守ることがあると教えてくれる一段です。