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荀子 / 大略篇

禹見耕者耦、立而式,過十室之邑、必下。

書き下し

禹は耕す者の耦するを見れば、立ちて式し、十室の邑を過ぐれば、必ず下る。

現代語訳

禹は、二人並んで田を耕す者を見かけると、車上で立ち上がって横木に手をかけ礼をし、十軒ばかりの小さな村を通り過ぎるときには、必ず車を降りた。

解説

聖王である禹の振る舞いを、二つの場面で切り取った一段です。二人並んで田を耕す農夫を見かければ、車の上で立ち上がり、横木に手をかけて礼をする。十軒ほどしかない小さな村を通れば、必ず車を降りる。天下を治める立場でありながら、名もない農民や小さな集落に対して敬意を形で示したというのです。式とは車の前の横木に手をかけて頭を下げる作法で、当時の車上での礼でした。地位が高い者ほど、下の者に対して礼を尽くすところに、その人の徳が現れます。荀子が礼を語る中でこの逸話を置いたのは、礼が上への服従ではなく、あらゆる相手への敬意の表現だと示すためでしょう。役職が上がったときこそ、現場の人や小さな取引先への態度が問われます。誰も見ていない場面での礼が、その人の本当の姿を映し出します。

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