荀子 / 大略篇
君子之於子,愛之而勿面,使之而勿視,導之以道而勿彊。
書き下し
君子の子に於けるや、之を愛して面わさず、之を使いて視ず、之を導くに道を以てして彊いず。
現代語訳
君子は我が子に対して、愛していてもそれを顔に出しすぎず、用を言いつけてもいちいち見張らず、道理をもって導いて無理強いはしない。
解説
子への接し方を三つの「しない」で示した一段です。愛していても、それを顔に出しすぎない。用を言いつけても、そばで見張らない。道理をもって導き、力ずくで強いない。どれも愛情を否定しているのではなく、愛情の出し方に節度を置くという話です。溺愛は子を甘やかし、監視は自分で考える力を奪い、強制は反発を生む。だから、愛は内に持ちつつ、任せた以上は信じて手を離し、押しつけずに筋道を示す、というわけです。これは子育てに限らず、人を育てるあらゆる場面に通じます。部下や後輩に対しても、期待を見せすぎず、任せたら口を出さず、正しさを説いても最後は本人に選ばせる。手を出したくなる気持ちをこらえるのは容易ではありませんが、その我慢こそが相手を一人前にする余白になります。