荀子 / 大略篇
夫行也者,行禮之謂也。禮也者,貴者敬焉,老者孝焉,長者弟焉,幼者慈焉,賤者惠焉。
新字:夫行也者,行礼之謂也。礼也者,貴者敬焉,老者孝焉,長者弟焉,幼者慈焉,賤者恵焉。
書き下し
夫れ行なる者は、礼を行うの謂いなり。礼なる者は、貴き者には焉を敬い、老いたる者には焉に孝あり、長ずる者には焉に弟あり、幼き者には焉を慈しみ、賤しき者には焉を恵む。
現代語訳
そもそも行いとは、礼を行うことを言うのである。礼とは、身分の高い者は敬い、老いた者には孝を尽くし、年長の者には従順であり、幼い者は慈しみ、身分の低い者には恵みを施すことである。
解説
行いとは何かという問いに、荀子は「礼を行うことだ」と端的に答え、その中身を五つに開いて見せます。貴い者を敬い、老いた者に孝を尽くし、年長者に従順であり、幼い者を慈しみ、身分の低い者に恵みを施す。上に向かう敬意だけでなく、下に向かう慈しみと恵みが同じ列に並んでいるところが要点です。礼はしばしば上下関係の窮屈な作法と誤解されますが、荀子の礼は、相手が誰であっても、その相手にふさわしい向き合い方を選ぶことを指しています。上には礼儀正しく下には横柄という態度は、ここでは礼ではありません。私たちの日常でも、取引先や上司への態度と、後輩や現場の人への態度が食い違っていないかは、そのまま人柄の試金石になります。相手によって態度を変えないこと。そこに行いの一貫性が生まれます。